テクニックヘッドホン

AKG K712 PROの分解・修理 (K612やK701にも対応)

AKG K712 PROの分解・修理について解説しています。

本記事で取り扱う内容はハウジング内での断線の修理です。

K700シリーズやK612でも同様の手順で修理できます。
手持ちのK701およびK612 PROで同様に分解できることを確認しています。

必要なもの

必要なものは、次の通りです。

  • はんだごて
  • はんだ
  • 細く硬い棒状のもの
  • ポジドライブドライバー 1番
  • (ポジドライブ1番がなければ)普通のプラスドライバー 1番

順に説明します。

はんだごて

はんだごてです。電子工作用のものであればなんでもOKです。板金用は使えません。

最近は100円ショップでも売っています(さすがに100円ではありませんが)。

はんだごて買う場合は、はんだごて台も一緒に買いましょう。台がなければ置くこともできません。

はんだ

はんだ。低融点の合金です。
(そもそも、はんだ付けは中学校の技術で習うはずなので、あまり説明の必要もないかもしれませんが…)

はんだは鉛入りのものがオススメです。鉛フリーのものと比べて、溶けやすさと仕上がりが段違いです。
こだわり派の人は、金入りでも銀入りでも好きなものを使えばいいと思います。筆者ははんだで音をカスタムすることは好んでいません。

細く硬い棒状のもの

細くて硬い棒状のもの。具体的には、直径1mm以内の金属製(もっと言えば鉄製)の棒が望ましい。
1本では難しいので、2本用意してください。

一般的には、ボールペンの先などが使えるでしょう。

ポジドライブドライバー 1番

ポジドライブとは、主にイギリスやヨーロッパで使われているプラスネジです。詳細は省きますが、日本でよく見るプラス(フィリップス)とは異なります。イケアの家具に使われていることで有名です。

当然のことながら、専用のドライバーがあるのですが、日本ではあまり流通しておらず、ホームセンターでも見たことがありません。これを持っているのはイケアマニアか、ヨーロッパ車をいじる人くらいでしょう。筆者も所持していません。

一応、近い大きさの普通のプラスドライバーで回すことができなくはないのですが、非常になめやすいので注意が必要です。

分解・修理

修理の手順を解説。

手順1 ~網状カバーを外す

まず、外側の網状カバーを外します。
この手順が最初にして最大の難関です。

写真のように細く硬い棒状のものをカバー外周付近に突っ込み、それを取っ手にして反時計回りに回します。これでカバーが外れます。結構固いので、ためらわずにやりましょう。

写真では、細く硬い棒状のものとして、やたら硬いブレッドボード用のジャンパー線を使っています。こんなものはなかなか手に入らないと思うので、家にあるちょうどよさそうなものを使ってください(先述のようにボールペンの先など。ボールペン2本でできることを確認しています)。最悪つまようじでもなんとかなりますが、何本も折れることは覚悟してください。筆者が最初に外したときは、つまようじでなんとかした記憶があります。

網状カバーを外す
外したところ

手順2 ~大カバーを外す

網状のカバーが外れたら、ネジが2つ現れるので、それを外します。このネジはポジドライブです。普通のプラスドライバーを使う場合は1番が近い大きさですが、なめやすいので注意してください。

ネジを外したら、大きめのカバー(AKG Reference Headphonesと書いてある部品)が外れるようになります。下側(装着したときに下になる方向)の溝から爪やマイナスドライバーを入れると、あっさりと外れます。上(ツル側)から外すのはなかなか難しい。

大カバーを外したところ。この画像は修理済みで、断線はしていません。

これ以上分解したい場合は、見えているネジを外し、それに対応する部品を外していくだけです。最終的に、バッフルからドライバー(音が鳴る部分のことです)を外すことができます。

手順3 ~結線

外れている電線をはんだごてで結線します。周りのプラスチックを溶かさないように注意しましょう。

特にドライバー(音が鳴る部分)から出ている端子にはんだづけする場合は、手早く作業しましょう。熱を入れすぎると、あっさりと死にます。

左側から右側へ右チャンネルの信号を伝えているものは、ツルというかスプリングというか、左右をつないでいるオレンジの被覆の鉄ワイヤです。見ればわかると思いますが。
蛇足ですが、この構造は合理的とか音が悪くなるなどと言われており、賛否両論です。個人的には、左右で通る導体が異なるのはやや気持ち悪い感覚がありますが、実際の音を聴いても左右の音の違いがわからないので、気にならなくなりました。

手順4 ~組み立て

分解の逆順で組み立てます。組み上がれば修理完了です。早速音を出して確認してみましょう。

終わりに

K712 PROを分解し、断線修理を行いました。最も外側のカバーを外すところ以外は、あまり難しくないと思います。

それにしても、AKGのこのタイプのヘッドホンは脆弱ぜいじゃくです。今回はK712の修理記事でしたが、手持ちのK612 PROでも同じような故障に遭遇しています。

本記事の内容は以上です。

COMMENTS コメント

  1. ぱ~ぶれいく より:

    ありがとうございました。先ずはお礼を。。
    先日、突然K612のRightが無音になり、「寿命か・・・」と諦めかけてたところ駄目もとで、ググり
    貴BLOGに。
    記事通りに修理し見事復活しました。
    最初の「網状カバーの取り外し」が助かりました。知らなければ、マイナスドライバーでこじ開け傷だらけになるところでした。反時計まわりにずらすなど思いも付きませんでした。
    まだ当分使えます。

    • モソス より:

      コメントありがとうございます。管理人です。
      本記事がお役に立てたのであれば幸いです。
      それにしても、K700シリーズやK600シリーズの、この部分での故障のしやすさには辟易してしまいます。構造の問題もありますが、はんだ付けの品質も悪い気がします。