スピーカー

Polk Audio MXT15のレビュー:無骨な外観と絶妙なサウンド。

Polk Audioのスピーカー、Monitor XT15 (MXT15)のレビューです。

同社の日本に導入されているモデルで最廉価のスピーカー。筆者は廉価モデルばかり買っていますが、これは中途半端なものを1つ買うなら、最も安いものを複数買いたいという筆者のコレクター精神に関係しています。

今回、このスピーカーを購入したのは、軽く聴いてみて思いのほか好感触だったためです。近場の家電量販店でこれの音を鳴らすことができるようになっており、そこでなにかビビッと来るものがありました。また、輸入しているD&Mがやたら宣伝していて提灯記事が連発されており()、本当にそんなに良いものなのかと疑問に思っていたということもあります。安くて良い音を売りにしているなら、そりゃあ買ってみるしかありません。

外観・仕上げ等

外観や仕上げについてのレビューです。

前面

前面

前面。なんというか、普通すぎてコメントしづらい見た目をしています。

ツイーターは四角いフレームで浅いホーン形状です。最近のブックシェルフはこういうフレームが多い気がしますが、このように浅くても効果があるのでしょうか。

ウーファーはシルバーのコーンで、Tannoy REVEAL 402にも似ています。むき出しの鉄フレームが無骨な雰囲気です。

エンクロージャーは角がキンキンの真四角です。ちょっと危ない感じもあります。角が潰れるとダサいので、取り扱いには十分に気をつけましょう。

ネットを外すとメーカー不詳になるタイプです。ツイーターの左下に小さくメーカー名が書いてありますが、言われないと気づかないでしょう。

ネットはまだらというかもくというか、ちょっとシャレたグレーです。ネットには大きくロゴが書いてあります。基本的にはネットを付けて使う前提なのかもしれません。

写真で重さはわかりませんが、本体が非常に重い。公式サイトによると、1台あたり4.1kgと書いてあります。これは小型ブックシェルフとしてはかなり重いと言えます。

仕上げ

仕上げは憎いほどにプラスチック。ざらついた質感のプラスチックが全体に貼ってあり、ツイーターフレームまでもプラスチックです。

しかし、黒いので安っぽくはないと思います。黒のつや消し仕上げは無難です。

背面

背面

背面。バスレフポートとターミナルがあります。

バスレフポートはなめらかになっているタイプ。風切り音などが起きにくくなりそうなので、「いかにもバスレフ」という雰囲気が減るのかもしれません。

ターミナルは安価なスピーカーでよくあるタイプ。ニッケルメッキなのがさらに安っぽいところです。どうでもよいことですが、本体に貼ってあるプラシートとターミナルの質感がよく似ています。

このターミナル、先端のカバーを外すとバナナプラグが使用できます。

ターミナル カバー外し後

くれぐれも「今どきバナナプラグも使えないのか」と腹を立てたレビューをECサイトに投稿し、無知を晒すのはやめましょう。

外観 総評

つや消し黒かつプラスチックの外観です。”Monitor XT”の名の通り、モニターっぽいと言えばそうなのですが、安っぽいという声も聞こえてきそうです。

価格が価格なので、見た目がどうこうというのも野暮でしょう。筆者は悪くないと思っていますが。

音について

音についてのレビューです。

概要

音はわずかにドンシャリ系かもしれません。しかし、カマボコに感じる場合もあり、あまり自信がありません。結構フラットなのかも。

味付けが絶妙で、名前の通りのモニター感と、アメリカンな雰囲気が共存しています。ソースを選ばないタイプではありますが、そのかすかな特徴によって、どの曲も魅力的に感じさせる感覚もあります。

次の図は、このスピーカーの音を感覚的に示したものです。

Polk Audio Monitor XT15 音の傾向

この図についての詳細はこちら

以下は詳細な説明です。

周波数的な特徴

低音域

低音はやや多めでしっかり伸びます。さすがに大型スピーカーのような地を這う低音ではありませんが、6畳間程度の部屋ではこれ以上出ても持て余す、と感じるくらいの低音は出ます。

しかし、バスレフで無理に低音を伸ばそうとしているタイプではないようで、それらしい嫌味な雰囲気は控えめです。あるいは、ウーファーのパワーがありそうかつダンパーが固めなので、きちんと制動しきれているのかもしれません。

リアバスレフなので、壁に近いと低音が多くなります。セッティングには気を遣うべきです。

中高音域

中域は意外なことに素晴らしいクオリティです。モニターライクなあっさり感の中に、確実な「旨味」が存在しています。この感覚が”絶妙”と評価した原因の大部分を占めます。
この部分の魅力を長々と綴れるほどの表現力を持ち合わせていないのですが、とにかく中域が非常に良い。表現はしにくいけれども良いと感じる音です。ここが最も推したいポイントです。

高域もなかなかなものです。しっかり出ている感じがありますが、刺さりすぎず、しかし刺さるべきときは刺さります。ハードドームのような鮮烈な音も出せますが、それでいてマイルドな感じと言ってもよいかもしれません。

ただ、超高域の伸びは控えめで、ワイドレンジ感はやや乏しいかもしれません。

音場感・定位感

音場感は左右に広がる感じで、おおむね広いほうだと思いますが、アンプによる変化が著しいので断言はできません。

定位感も左右に特化している感じです。奥行き感は控えめで彫りの深い感じは出にくい。しかし、センターの定位は盤石で、そこに居るかのような存在感が出てくる場合もあります。
音像は左右スピーカー間やや前方に定位する感じ。飛び出しすぎず、粛々と鳴らしてくるタイプです。

その他

このスピーカー、全体がよく統合されていて、完成度が高いと感じます。その結果の”絶妙”な音であって、クセが少ないのに特徴的という評価になるのかもしれません。

軽く聴けばあっさりした音なのですが、よく聴けば確実に「音楽」がそこにあります。アメリカらしい音調の明るさがあるとか、ノリ重視という評価もできますが、筆者はそのように感じました。

また、アンプによる音の違いを明確にするほどの性能の良さもあります。スピーカーで音を鳴らす場合はアンプも重要なので当然ではありますが、安価なスピーカーだからアンプは適当でよいなどとは言わせないクオリティが確実にあります。

音について 総評

まさに絶妙な音と思います。大きさの割にどっしりした低音が出せるのも魅力です。

なんというか、どのように良いのかを伝えにくい音です。とにかく聴いてみてほしい。安いので、とりあえず買ってみるのもアリでしょう。

ユニット・ネットワークなど

ユニットやエンクロージャー、ネットワークなどを紹介したいところなのですが、現行製品の中身をあまり詳細に公開すると何かマズい可能性もありますので、大雑把に紹介します。

ユニット

ウーファー

ウーファー

13cmコーンウーファー。昔ながらの無骨なフレーム形状です。

コーンは紙にコーティングしたもの。外側からはプラスチックか何かに見えますが、コーン本体は紙製です。

センターキャップは薄手のゴム製。2ウェイ用ウーファーではよくあるタイプです。

エッジは太めで、しっかりしたゴム製。ダンパーが固いので、それに合わせて制動を効かせるようにできているように見えます。

外側からは見えませんが、このウーファーが本体の重さの原因です。口径の割に大きめのマグネットが2枚重ねで装着されており、さらに同じ径のキャンセルマグネットまで付いています。価格の割にはすごい物量です。

ツイーター

ツイーター

2.5cmソフトドームツイーター。

フレームはプラ製ながら、浅いホーン形状をしています。ドーム部外周に歯車のような形のカバー(?)が付いていますが、イコライザの類なのかどうかはわかりません。

テリレンなる素材が使われているようですが、これはポリエステル系の素材の商標で、基材の布部として使用されているようです。ソフトドームは布系材料に樹脂類を含浸させて作るので、その含浸材も気になるところですが、特に言及はありません。

触ってみた感じ、昔ながらのソフトドームという感じがしました。最近のソフトドームはもっちりしっとりした質感のものが多いのですが、これはカサカサ系です。昔のものはカサカサ系か、あるいはゴム系を使ったベタベタ系が多い印象があります。

エンクロージャー

エンクロージャーは厚手のMDF製のようです。バッフルが最も厚いのは当然ですが、他の部分もかなり厚手な印象を受けました。

内部の角補強もしっかりしています。また、天面はウーファー取付部をくり抜いた端材が貼ってあり、補強されています。
天面に補強がなされているということは、逆さまに置くと低音が増える可能性があります。底面にはインシュレーターを敷くので振動しにくくなりますが、天地逆にすると、補強されていない方の面が開放され無防備なので、振動しやすくなるはずです。

吸音材はバスレフにしては多めで、内部の上半分全体にふわっとある感じ。材質はポリエステルのウール状のものと思います。

ネットワーク

ネットワークはウーファー・ツイーター共に12dB/octです。ウーファー側にはインピーダンス補正が付いています。ツイーター用の固定アッテネーターはネットワーク前に直列タイプです。

コンデンサは合計3つありますが、全て電解1発です。

ネットワーク基板は底面に4つ角がねじ留めされており、妙に丁寧です。ターミナル裏に直ではありません。

総評

その名の通りモニター感の強い外観で、音もそのような雰囲気をまといつつ、やや特徴的な部分のある絶妙な感じ。

コストパフォーマンスが良いのか、と聞かれると、非常に良いと思います。現代の同価格帯のスピーカーをいくつも持っているわけではないので単純に比較はできませんが、古い高価なスピーカーをいくつか持っている身としては、そのように思います。古い似たような価格のスピーカーも持っていますが、それよりは確実に良い。スピーカーは構造こそ変わっていませんが、材質等の面では少しずつ進化してきたのかもしれません。

高性能なことによって、アンプやその他のアクセサリなどにこだわりたくなります。初心者はセッティングを学び、上級者はシビアに音を追求するなど、幅広い層にとって「遊べる」スピーカーと思います。

端的に言って、かなりオススメなスピーカーです。少なくとも、筆者は非常に気に入っています。最近はこればっかり使って、アンプを替えたり、セッティングを変えたりして遊んでいます。筆者の環境は頻繁にスピーカーが入れ替わるため、シビアにセッティングすることはほとんどないのですが、そうさせるだけの魅力があるということかもしれません。

本記事の内容は以上です。

[以下蛇足]
今回はケーズデンキの店頭で購入したのですが、非常に良い買い物でした。店頭に表示されていた価格は24,000円近くしましたが、あんしんパスポートとの現金値引と、たまたま使えるクーポンがあったので、ネット通販より安く買えそうだと思っていたら、なぜか交渉もしていないのに値引きされ、2万円ポッキリで購入できました。店員の対応も申し分ないものでしたし、たまには店頭で買うのも良いと思わせる出来事でした。(ケーズデンキの宣伝をしたいわけではありません。)

COMMENTS コメント

  1. 北島 より:

    PolkオーディオMXT15のレビューがとても興味深く、参考になりましたし、購入の決め手になりました。
    購入して、手持ちの古いアンプに接続して、ハイレゾ音源を聴いて楽しんでおります。レビュー通りのコスパのとても高いスピーカーだと感じました。
    他の記事もとても興味深く、楽しく拝見しております。