テクニック

Plastic Audio式の図の説明

本サイトにおける、スピーカーやヘッドホンの音の傾向を可視化した図の説明です。

基本的には、説明を読まずとも、ノリでなんとなく理解できるようにしているつもりです。
図の詳細を知りたい方は、本記事をお読みください。

周波数特性

周波数特性のような図については、スピーカー・ヘッドホンで共通です。

周波数特性とは

念のため、周波数特性について説明しておきます。

周波数特性とは、周波数に対する何らかの応答を表したものです。言い換えれば、周波数領域での特性ということです。通常は周波数を横軸にとり、その応答を縦軸にとったグラフで表されます。
「なんらかの応答」とあるように、どんな値であっても、周波数に対して変化があるならば、周波数特性が得られます。

オーディオにおいては、スピーカーやヘッドホンの出力レベル(あるいは音の大きさ、音圧)の周波数特性が一般的です。これは、どの周波数においてどのくらいの音の大きさなのか、という指標です。かつてはメーカーから開示されることも多かったのですが、最近はあまり見かけなくなりました。

当サイトの図について

当サイトの図は、その機器の聴感上の周波数特性を5本のバーで表示しています。

耳で聴いた特性とマイクで測った特性は大きく異なります。それは等ラウドネス曲線という、耳の周波数特性があるからです。
等ラウドネス曲線についての詳しい言及は避けますが、おおむね、低音をかなり強くし、2k~5kHzあたりを大きく減らし、高音を強めにしなければフラットには感じません。

5本のバーはそれぞれ、次の図のような周波数を受け持っていますが、あまり厳密ではありません。そのときによって変化したりもします。

また、各帯域(バー)に特筆すべきことがあれば、バーのテクスチャで表現することもあります。
(例:高音がきれいならば、キラキラしたようなテクスチャを右のバーに設定)

各バーが受け持つ帯域

それぞれのバーの説明を次に記します。

左のバー (~80Hz)

いわゆる重低音。音というよりは、振動として感じられるような帯域です。

回折しやすく(回り込みやすく)、打ち消しあったり強め合ったりしやすい(つまり定在波になりやすい)。大型スピーカーの設置においてルームチューニングが重要になってくるというのは、このあたりが原因と考えられます。また、部屋の大きさに見合わない大きすぎるスピーカーが忌避きひされるのも、このような原因と思います(もちろん、威圧感がありすぎるという見た目の問題もあるでしょうが)。

バスレフ型の小型ブックシェルフスピーカーでは、ほとんど出ていない領域でもあります。

この帯域をスピーカーで満足に鳴らすには、大型のスピーカーとパワーが十分なアンプが必要です。パワーが十分なアンプとは、最大出力が大きいものではなく、パワー感があるアンプのことです。基本的には、瞬間的な電流出力やフィードバックの有無もしくは量、後段のフィルターなどが関係していると思います。

ヘッドホンの場合は、この帯域も十分に出ていますが、なぜかあまり豊かには感じません。

左から2番目のバー (80~500Hz)

ドゥンドゥンと心地よい低音から、低めの男性ボーカル(の基音)くらいの帯域。

小型ブックシェルフスピーカーでもおおむね出ている領域の低音です。もちろん、よほど小さいアクティブスピーカーなどでは出せませんが。

ここが多めに出ていると、低音が多く感じられます。もっと具体的に言えば、100Hzくらいを持ち上げるとドゥンドゥンになります。最近のBoseなどはこんな感じでしょう。こういうチューニングのものはそれ以下の帯域がほとんど出ていないことも多い。

中央のバー (500~2kHz)

中音域。主に男女ボーカルの基音の帯域です。

言うまでもなく、ボーカルものを聴くのであれば重要な領域と言えます。
しかし、人間の声の鳴り方が怪しいと誰もが気づきやすいので、このあたりの帯域が変なことになっているスピーカーやヘッドホンはかなり少ない気がします。

右から2番目のバー (2k~5kHz)

中音域の高めの帯域。一般的に「高音」と言われているものはこのあたりの帯域かもしれません。シンバルやボーカルのサ行など、刺さる音はこのあたりの周波数です。

この帯域は、人間の耳において最も敏感です。すなわち、この帯域が出すぎていると、うるさくて聴きづらい音になります。反対に、ここを少し抑えれば、聴きやすくマイルドな音になります。少なすぎる場合は、キラキラ感が少なくもっさりした音になります。

聴きやすさや刺さり感を重視する場合は、この部分に注目してみてください。

右のバー (5kHz~)

高音域。もしくは超高音域。ほとんどが倍音成分と思います。

この帯域がしっかり鳴っていると、楽器や声は自然な音色になり、艶感が出ます。

図の具体例

どのような音のときに、どのような図になるかという具体例を示します。

具体例その1

完全フラット

完全にフラットな音。理想的ですが、そんなものはこの世に存在しません。人によって耳の特性が違うのもありますが。

マニアではない一般的な人の耳の場合、フラットな音は、高音が強く、低音が弱く聴こえます。

フラットに感じる

一般的にフラットに感じる音。いわゆるピラミッドバランスで、腰が据わったどっしりとした音です。

モニター用でないスピーカーやヘッドホンはこういったバランスになっていることが多い。心地よく音楽を聴けるので、これがちょうど良いのかもしれません。

8cmフルレンジ一発

8cmのフルレンジユニットを小さめの箱に取り付けたイメージ。ボーカル帯域は抜群ですが、低音や高音はあまり鳴りません。

周波数特性的にはあまり関係ありませんが、完全に点音源でネットワークによる位相ずれもないため、非常に定位感が良くなります。

品がない

品がない音。いわゆるドンシャリです。

この手のものは、目立つ低音ばかりをドゥンドゥンと鳴らし、低音の伸びが犠牲になっていることがよくあります。

図の具体例2 ~メーカー別篇

メーカー別の音の傾向。だいたいこんな感じというイメージです。

ソニー

ソニーはとにかく理想を追求して、癖を取り去る音作りという印象があります。かつてAPMスピーカーを標準ラインナップにしていたということからも、そのような意図を感じます。

APMシリーズは何種類か所有していますが、本当に癖がなく、恐ろしいまでに素直なスピーカーです。APMに引っ張られすぎている感じもありますが、やはりあれが全盛期で、好きなようにできていた時期だったと思います。

ダイヤトーン(70年代)

ダイヤトーンはカマボコサウンドで有名ですが、70年代は特にその傾向が強い気がします。密閉型で低音は控えめ、しかもコーンツイーターの癖が強く、2k~5kHzあたりが出すぎていて、うるさい感じです。
80年代になると、デジタルソース対応を謳うライバル製品に対抗するためか、ハイファイ感が出だしますが、それでもカマボコ感は抜け切りません。

Bose

言わずと知れたボーズサウンド。もはや説明の必要もないでしょう。

ボーズが製造しているユニットを単体で鳴らすとかなり良いのですが、システムとして完成しているとこのザマです。どうもネットワークやエンクロージャのチューニングが良くないようです。

ビクター

ビクターはやや低音寄りで高音控えめ、しかしつまらない音でもない、というバランスが取れている印象です。まさに日本のスピーカーという雰囲気。

タンノイの上位シリーズでも使われている、クルトミューラーコーンの良さを日本人に伝えたメーカーでもあります。

音場・定位

音場・定位については、スピーカーとヘッドホンで説明が異なりますが、共通の部分もあります。

共通の説明

どちらの場合も、音場を青の領域で示し、定位を線と丸で表現しています。

音場は音の広がり感です。どのように広がっているように感じられるか、という領域を図に示しています。

定位は、楽器やボーカルがどの位置から聴こえるのか、という意味です。大抵の曲には中心に定位するパートがあり(歌ものならボーカルが多い)、その左右に他のパートが広がっているように感じられます。その中心を丸で示し、その他を線で示しています。

このあたりの感覚は、人によって異なるかもしれません。筆者はヘッドホンからオーディオに参入しましたが、スピーカーの音場や定位を十分に感じられるまでには、少し時間を要しました。

スピーカー篇

スピーカーでの音場・定位は次の図のように表します。

スピーカーにおける音場・定位

スピーカーの場合は、音場・定位共に、種類によって大きく異なります。これはスピーカーの大きさによる低音再生能力や、ネットワークによるつながり感、あるいは位相ずれが個々に異なるからでしょう。

ヘッドホン篇

ヘッドホンの場合は、次のようになります。

ヘッドホンにおける音場・定位

ヘッドホンの場合は、実際のところ、あまり違いがありません。しかし、多少音が広がるとか、やや定位が前にあるという場合がありますので、そういった違いがわかるようにしています。

ヘッドホンでは、定位がぼやけているということはありません。どのモデルでもピタッと定位します。これはフルレンジ一発のスピーカーとほとんど同様の構造で、ドライバーがひとつだけであり、ネットワークによる位相ずれもないからでしょう。この理論からすれば、複数のBAドライバーを使ったイヤホンでは、定位感が曖昧なものがあるかもしれません。

説明は以上です。

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