スピーカー

TANNOY REVEAL 402のレビュー:値段以上の音とこだわり。

TANNOY REVEAL 402のレビューです。

タンノイのパワードスタジオモニターシリーズの最下位モデルで、ウーファーは10cmしかありません。しかしツイーターとウーファーを独立駆動するバイアンプで、総合出力は70Wであるとしています。
同じくタンノイのパワードスタジオモニターで、GOLDシリーズもありますが、そちらはよりプレミアム路線のようです。伝統の同軸ユニットを使っているので、気合の入れようがわかります。

タンノイの銘がついた普通に日本で買えるスピーカーのうち、おそらく最も安価なものと思います。ペア3万円くらいでタンノイが買えるというのは、少々驚きです。

もしかすると、REVEALシリーズは生産終了した可能性もあります。公式サイトを見てもそのようには見えないのですが、日本で取り扱っている店舗が非常に少なくなり、販売が継続しているようには見えません。正規代理店であったキクタニミュージックのラインナップからも消えています。その場合はGOLDシリーズが後継ということでしょう。

外観・仕上げ等

全体

全体

全体的に丸みを帯びたデザイン。モニタースピーカーにしてはずいぶんとかわいいデザインですが、ウーファーが色の関係で目玉のように見えるので、独特の威圧感があります。

ユニットはバッフル裏から固定されているので、表面にネジがなく、ツルッとしています。

ツイーターは非常に短いホーンのようになっています。このようなタイプはよく見ますが、違いがわかるほど効果があるのでしょうか。

バスレフポートが正面にあるので、壁から離して設置する必要はありません。これはニアフィールドモニターとして便利な特徴です。机は大抵壁沿いに設置するので、スピーカーを置くときに難儀しやすいのですが、これなら問題ありません。

仕上げ

仕上げは全体的にプラスチックです。バッフルはプラスチックの成形品なので当然ですが、MDFでできている側面まで丁寧にプラスチックシートを貼り、質感を揃えてあります。

粗めのサンドブラストのようなシボ感のテクスチャです。高級感はありませんが、安っぽくもありません。

背面

背面

背面には入力端子やスイッチなどがあります。

入力については、XLR端子でバランス入力、フォーンジャックでアンバランス入力に対応しています。
XLRは2番ホットです。ノイトリック製でなく、ロック機構のない安そうなレセプタクルなのがやや残念。
フォーンジャックの方は、アンバランスと明記されているため、TSの2ピンにしか対応していないと思います。

AUX入力として、ステレオミニジャックがあります。「MONITOR LINK」と書いてある方は、左右のスピーカーを繋げるケーブルを挿すところです。そのための長~いケーブル(4.5m!)が付属しています。これによって、左右どちらのAUX入力に入力しても、ステレオの音声を再生できます。
このケーブルが長すぎることによって、AUX入力を使用した際に左右の音量差が気になるという問題もあります。短いケーブルを用意するか、オマケの機能くらいに考えるのがよいでしょう。

3段階のイコライザー機能があります。高音域を1.5dB持ち上げる・減らすことができるようです。

ボリュームはクリック感があるタイプ。このボリュームは固定し、ボリュームコントロールできる上流(オーディオインターフェイスなど)を使うのが正しい使用法のはずです。左右のボリュームをいちいち操作するのも面倒ですし。

電源スイッチの上に電源LEDがありますが、これがかなりまぶしいうえに青く光ります。壁際に設置している場合、壁が青く光っているかどうかでON/OFFを判断できるほどです。邪魔であれば、ビニールテープなどで覆うのがよいでしょう。

入力電圧は選択式。海外でも使えます。日本でも200Vが利用できる環境なら、その方が音が良いはずです。

電源コネクタは一般的な角型タイプでアースピンがないもの(どうでもいい情報ですが、正式名称はIEC-60320-C18です)。オーディオ用のお高いケーブルも使えます。

背面の金属部はアルミだと思います。背面なのに丁寧にヘアライン仕上げです。

側面

側面

大抵のスピーカーは側面に何もないのですが、このスピーカーは違います。適度な大きさでタンノイのロゴが印刷されています。これは非常に良い。

スタジオモニターとして有名なJBL 4312なども側面にロゴがついていたりしますが、そういう伝統でもあるのでしょうか。

外観 総評

丸っこい形状に、プラスチックの黒色仕上げです。タンノイらしさは全くありません。モニタースピーカーとしてはやや奇抜な形状ですが、黒一色なのはそれらしいところ。

側面のロゴは非常に良いと思います。

音について

概要

音は基本的にフラット系ですが、やや低音が強く、高音が弱めのピラミッドバランスに感じます。しかも低音はモヤッとしている。空間表現は悪くないが非常に良いとは言えないと思います。

評価の際の本体の設定などについては、付属イコライザの設定をNATURALのポジションとし、付属のインシュレーター(底面にスポンジが貼ってあります)を使った状態としています。

次の図は、このスピーカーの音を感覚的に示したものです。

TANNOY REVEAL 402 音の傾向

この図についての詳細はこちら。

Plastic Audio式の図の説明
本サイトにおける、スピーカーやヘッドホンの音の傾向を可視化した図の説明です。

以下は詳細な説明です。

周波数的な特徴

低音域

低音はかなり伸びています。10cmウーファーから出ているとは思えないほどです。スペックによると、-3dBで60Hz以下まで出るそうです。

しかしながら、それによる弊害か、解像度が低いというか、モヤッとしています。バスドラムが「ドシッ、ドシッ」という音だとすると、このスピーカーでは「モシッ、モシッ」(電話?)という感じ。
バスレフ型の中でも、かなり締まりがない方だと思います。ユニット径のわりに低音を伸ばしすぎたツケがまわってきているのか、もしくはアンプのパワー不足なのでしょう。

中高音域

中域はつながりが良い感じですが、あまりシャープではありません。

高域はあっさりしており、やや控えめな量で、勢いは強くありません。

中高域は控えめな鳴りです。フラット感の強い音にありがちな、キンキンする感じがありません。しかし鳴っていないというわけでもない。聴きやすいと言えばよいのか。

音場感・定位感

音場は狭め。10cmウーファーで広い音場感を出すのはさすがに無理です。

定位は良いといっても問題ありませんが、非常に良いとは決して言えない感じ。その辺りにいるのはわかるが、明らかにそこにいるという感じではありません。

音について 総評

フラット感はありますが、低音のもやりや中高域の控えめな感じが気になります。1枚ベールを隔てたような音という雰囲気。
そのおかげか聴きやすく、リスニング用としても好適でしょう。

筆者はハードドームツイーターと18dB/octのネットワークで構成したような超シャープな音が好きなので、そのような観点で言えば、全くシャープさが足りません。
他のスピーカーと比較した比較的中立の立場で言えば、特に問題ないか、やや控えめという感じ。低域はどうしようもありませんが。

ここまでの文だと、あまり良い印象ではないのかと思うかもしれませんが、決してそうではありません。実際に聴くと悪くないのですが、文章にするとなぜかネガティブな感じになります。不思議です。これがタンノイ式の渋いサウンドというやつなのか。

あるいは、特徴がないことが美点なので、悪いことばかりに着目してしまうのかもしれません。特徴がないということは褒めづらいので、相対的にどうしても悪い方向につられてしまいます。

値段を考慮するのであれば、非常に良い音と言って問題ないと思います。

内部構造・ユニットなど

内部構造やユニットなどの詳細を紹介しています。

内部構造

内部にアクセスするには、背面の金属板を留めるネジを外します。外周の10本のネジがそれです。

取れた背面がこちら。

背面部

基板などが取り付けられていますが、嫌でも注目してしまうのが電源トランスでしょう。まさかこんなものにトランスが入っているとは驚きです。しかも結構大きい。

中央の白い基板に載っているのがアンプICで、STMicroelectronics TDA7265Bです。AB級ステレオパワーアンプで、ステレオの2チャンネル分をウーファーとツイーターに割り振ることによって、バイアンプということにしているようです。

コンデンサはYUSCON。中華メーカーですが、そこまで怪しくはないと思います。

全てのケーブルにスポンジが巻いてあり、防振が徹底されています。

背面は以上。次は本体です。

本体

本体側は吸音材が1枚。ポリウールです。

エンクロージャのMDFは結構ぶ厚い。角補強もしっかりしています。

吸音材を取ると、次のようになっています。

本体内部

内部にはネジが7本。これはバッフルを固定しているものです。これを外すと、ユニットとバッフルが一体のASSYが外れます。

バッフル&ユニット

バッフルにユニットがネジ留めされています。接着剤などはないので、簡単に外れます。

バッフルはプラスチックの成形品ですが、肉厚で補強もあり、非常に高強度です。樹脂自体がかなり硬い。

外したユニットの詳細は以下から。

ユニット

ウーファー

ウーファー

ウーファーは10cm。エッジとセンターキャップはゴムで、コーンは紙です。いわゆるコンケーブ型で、センターキャップとコーンがなめらかにつながるような形状です。センターキャップの共振を利用できないので高域は伸びませんが、2ウェイで使うなら問題ないでしょう。

フレームは鉄プレスで、それなりに肉厚なので強度は十分そうです。

マグネットが大きい。振動板より大きいくらいです。しかもヨークに穴が開いています。凝ってますね。

コーンは紙と書いていますが、正面から見るぶんにはそうは見えません。裏から見れば、紙であることがわかります。

コーン 裏から

紙特有のプレス跡が見えると思います。黄ばんで見えますが、タバコのヤニなどではなく、最初からこの色のはずです。この個体は筆者が新品で購入したもので、筆者は喫煙者ではありませんし、そういう方に貸したこともありません。

ツイーター

ツイーター

ツイーターは2cmソフトドーム。外から見るぶんには、あまり特徴がありません。強いて言うのであれば、半透明なことくらいでしょうか。中の吸音材がうっすら見えています。

マグネットは小さめ。安いアクティブスピーカーに付いているものなので、仕方がないところでしょう。

このツイーターは、簡単に分解できます。接着剤で固められたりはしていません。分解したのが次の写真。

ツイーター 分解後

磁気回路のギャップ内に磁性流体が注入されています。さらに、ボイスコイルボビンがアルミ製です。このツイーター、相当に耐入力が高いと思われます(50Wくらい?)。こちらもなかなかの凝りよう。

ウーファーといいツイーターといい、とにかく音が暴れないようなものを選んでいる雰囲気があります。モニタースピーカーを謳うものなので、妥当な選択だとは思いますが。

その他

作りが粗い

内部のネジがなめかけているなど、内部の細かいところで作りが粗い雰囲気があります。分解しなければ問題ないので、一般的には気にならないかもしれませんが。

それにしても、製造時点でネジがなめるとは、100円ショップのドライバーでも支給されているのでしょうか。100円のドライバーと400円くらいのドライバー(上の写真に写っているSK11など)では食いつきがまるで違います。この違い、ぜひ体感してほしい。話がそれてきましたが。

スピーカーの作りが粗いのはよくあることなので、あまり気にしてはいけないのかもしれません。

総評

ちょっと独特のデザインで、フラット系だがやや気になる点が散見される音のスピーカー。部品などにはこだわりを感じます。

このスピーカーにおいて特に優れている点は、コストパフォーマンスです。出音に気になる点があるとは書いていますが、それは絶対的なパフォーマンスであって、値段を考慮するなら素晴らしいの一言です。なにせペア3万円程度ですから、スピーカーとしてはかなり安価です。さらにアンプも付いてきてこのような音では、コストパフォーマンスが良くないとは口が裂けても言えないでしょう。

フラット系でおとなしい音の安価なスピーカーが欲しい場合にはオススメできます。ちょっと大げさなPCスピーカーとしても好適です。初心者にもある程度オススメ。
オーディオマニアや、低域の締まりにこだわる人(最近はバスレフ型スピーカーが多いのでそういう人も減ってきているでしょうが…)、鮮烈な高域が欲しい人には非推奨。

本記事の内容は以上です。

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