仮想アースを自作してみたので、作り方や使用した感想を紹介します。
木炭を使用する方法は知っていたのですが、今はあまりメジャーではないようで、スチールウールなどの金属タワシ類を使用するものが一般的なようです。この記事では後者の方法を採用しています。
かつて大地アースがとれる家に住んでいたことがあるのですが、そのときにいろいろ試したところ、接続する機器によっては非常に絶大な効果が認められました(「非常に絶大」なる怪しげな表現を使うほどの凄まじい効果でした)。現在のオーディオ環境では大地アースがとれないので、その効果の片鱗でも味わえないかと期待して、仮想アースを作るわけです。
材料
材料は次の写真の通り。ほとんどのものは100円ショップで入手できます。筆者の場合はたまたま全て手元にあったので、これを作るために購入したものはありません。
- 空き瓶
- スチールウール
- 銅針金
- 真鍮ネジ
順に説明します。
空き瓶
中身が空の瓶です。接続端子を取り付けるため、フタがついているものがよいでしょう。
画像のものはネスカフェ・エクセラの大瓶です。スチールウールが大量なので、全部入りそうな大きめの瓶にしました。ちなみに、筆者はこのコーヒーが好みではありません。
空き瓶がない場合は、100円ショップなどで買いましょう。
しかし、瓶である必要もないかもしれません。タッパーや水筒などでも、あるいは容器あれば何でもよいと思います。スチールウールをある程度ギチギチに詰められる、適度な大きさのものが必要です。
スチールウール
細いスチール線でできたタワシです。
画像のものはダイソーにて税抜100円で購入したもの。ガンブルー(黒染め)処理のスラッジ除去に使おうと思って購入しましたが、結局ほとんど使わなかったものです。
余った場合は、燃やして遊ぶこともできます。火をつけて息を吹きかければ、線香のように燃えていきます。小学校の理科の教科書に載っている実験です。
銅針金
銅でできた針金です。エナメル線と似ていますが、被覆されていないので、全体が導通します。
写真のものはダイソーで購入したもの。材料はおそらく青銅でしょう。サンポールめっきの材料として購入したものの余りです。
今回の場合は全表面で導通することが必要なので、エナメル線は使えません。
真鍮ネジ
真鍮製のネジです。めっきなどではなく、全体が完全に真鍮でできています。
このネジを接続用ターミナルにします。
写真のものは八幡ねじ製で、大抵のホームセンターで取り扱っています。なぜ皿ネジなのかというと、それしかないからです。真鍮ナベネジというものはあまり見たことがありません。
真鍮ネジを使うのは、オーディオ的な配慮です。真鍮は非常にナチュラルな音の素材で、変な付帯音が付いたりしませんので、どこに使っても問題ありません。
特に気にしないのであれば、普通の鉄ネジでも問題はありません。
作り方
作り方を説明します。
1. 鳥カゴを作る
内部での導通を確保するために、銅針金を使って鳥カゴ状のものを作りました。
これの内外にスチールウールを敷き詰めることにより、よりよい導通を確保できるかもしれません。
1本の銅針金を切らずに作っています。そのほうが余計な抵抗の増加を防ぐことができるかもしれません。
ターミナルに接続するための部分を長めに残しています。こういう細かい部分は忘れがちですので、十分に気をつけましょう。部品を設計するときに、固定部を忘れるのと同じ理屈です(コレ本当にあるんですよ…)。
できた鳥カゴを瓶に入れます。
2. スチールウールを詰める
瓶にスチールウールを詰めます。これが結構難しい。スチールウールをほぐしたりしながら、できるだけ鳥カゴを変形させないようにして詰めました。
スチールウールをほぐす場合は、ワイヤーの細片がばらばらと出てくるので、新聞を敷きましょう。
詰め終わったところ。どう見ても鳥カゴが変形しまくっていますが、気にしてはいけません。導通していればよいのです。
3. ターミナルを作る
鳥カゴから出ている銅針金をネジに巻きつけ、ナットで挟み込んで固定しました。
黒いネジは普通の鉄ネジです。真鍮のナットは在庫不足でしたので、やむを得ずこうなりました。
次に、ネジのターミナルを固定するため、フタに穴を開けます。キリでもドリルでも、好きな方法で穴開けしてください。バリはきちんと取りましょう。
あとは、ネジをフタに固定し、フタを閉じれば完成です。細かく説明する必要はないほど簡単な工作だと思います。
完成図。怪しげな雰囲気が漂っています。
ギャラリー
白背景の写真を撮ったので、載せておきます。
本体
なにやら怪しいものが入ったインスタントコーヒーの瓶です。
ターミナル部には、着脱しやすいように手で回せるナットを付けてみました。
接続ケーブル
機器に接続するためのケーブルもついでに作りました。
USBのグラウンドを仮想アースに接続するケーブルです。
電線はVFF 1.25sqを裂いた片割れです。アース線は太くするという原則をもとに、端材から最も太いものを選びました。
仮想アース側は裸丸形圧着端子。裸圧着端子は圧着のミスがないので良い。逆に、ギボシ端子などのオープンバレル端子がなぜ市民権を得ているのか、筆者には疑問で仕方がありません。
ケーブルはこのように接続されます。
少しスチームパンクな雰囲気があります。多数並べたりすれば、まさにそんな感じ。
使用した感想
実際に使用した感想です。
接続機器
筆者のオーディオシステムはRaspberry Pi 3B → USB-DAC → アンプ → スピーカーというラズパイシステムなのですが、このうち仮想アースを接続した機器はラズパイです。
これには根拠があります。冒頭の続きですが、大地アースをとれる家で試したところ、PCオーディオならばPCをアースするのが圧倒的に効果が高かったという結果を得ています。その効果たるや、オーディオコンポーネントを替えたとかいう話ですらなく、もはや次元が違うとすら思うものでした。Raspberry Piは小型のPCなので、PCオーディオに該当します。
また、ラズパイはグラウンドが全体で共通(もちろんUSBも含む)なので、上述のケーブルで確実にアースできます。
感想
この仮想アースの有無によって、結構音が違います。Raspberry Piは金属シャーシなどがなくグラウンドが貧弱なので、効果がわかりやすいという部分があるかもしれません。
その音ですが、まずはクリアになった雰囲気を感じました。今まで埋もれていたリバーブなどが鮮明になり、もやが晴れたような感じです。
これはある意味、「寒い雰囲気」があります。寒いとは比喩のことではなく(お寒いという意味ではなく)、本当に気温が低いときのことです。筆者は北海道の特に寒い地域出身・在住で、本当に寒いときの雰囲気をよく知っています。-20℃を下回るような寒い日は、快晴なことが多く(寒すぎる日は雪が降りません)、しかも非常に澄んだ雰囲気です。はるか遠方まで見晴らしが良く、遠くの山すら鮮明に見えます。
だいぶ話がそれてきましたが、そんな雰囲気の音に感じました。聴いたときに寒気を覚えたほどです。
さらに、低域の改善も感じました。地に足がついたというか腰が据わったというか、そういった感覚です。インシュレーターを柔らかいものから硬いものに替えたときの感覚に似ています。
また、空間が広がる感覚も得られました。より細かく言うと、今までは音場の端に露骨な境界があったのが、その境界にボカシがかかり、その先の空間がありそうな感じになった、という具合です。その感覚を次の図に表しています。
最後に、スチールウールが鉄製なので、鉄のクセのようなものが乗っている気がしないこともないのですが、気のせいかもしれません。別の材質で作ったものと比較してみたいものです。そもそも大抵の機器のシャーシは鉄なので、この方向が一般的(≒正しい)かもしれません。
感想はこれくらいでしょうか。想像よりもかなり大きな効果が得られたと感じています。
総括
仮想アースを作りました。思っていたよりも効果が大きく、満足な結果です。
実際のところ、アースなので、ある程度の導体であれば何でもよいのです。金属タワシ法が簡単というだけで、他の方法も無数に考えられます。わざわざ作らなくても、余っているアンプのシャーシを仮想アースにしても何らかの効果があるでしょう。
材質を変えるとか、別の方法で作るなど、いろいろ試したくなりました。それほどまでに、仮想アースに対するポテンシャルを感じています。この記事の続編がそのうち出るかもしれません。
本記事の内容は以上です。
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