FX-AUDIO- FX-02J+のレビューです。
FX-AUDIO-の名刺程度の大きさの単体DACです。このシリーズでは最初の方に出たモデルと記憶しています。超高級オーディオ機器に使用されている、WolfsonのDACを搭載して5000円程度というアピールポイントを携えて発売されたものです。
この個体は、発売日当日に購入した記憶があります。やはり、ハイエンド製品に搭載のものの片鱗を安価に味わえるというのは、気になるものでしょう、マニアならば。当時の筆者でも、DAC ICの性能だけでなく電源や後段のアナログ回路も非常に重要(つまり、高級機器との差はDAC ICだけでは埋められない)ということは十分に理解していましたが、それでも迷わずに購入しました。WolfsonのDACを搭載したものは持っていなかったので。
※現在は在庫切れのようです。下記リンクから遷移した場合、「在庫無しを含む」で検索し直せば詳細を見ることができます。(2021/12/17現在)
外観・仕上げ等
全体 その1
黒くて四角い箱状です。デザイン性はほとんどありません。
アルミ押し出しの外側です。ヘアライン仕上げで、黒アルマイトされています。印字はレーザー加工と思います。
上面には、なにやら細かく印字されていますが、製品名やスペック等が書いてあるだけです。見ればわかると思いますが。80年代のスピーカーみたいな雰囲気。
写真左のRCAジャックは、出力端子です。白/赤が左/右チャンネル、黒が同軸S/PDIF出力です。なぜかDACとしてだけでなく、DDCとしても使用できます。
全体 その2
出力端子の反対側には、入力端子があります。入力はオーディオ機器で一般的なUSB Bなので、凝ったケーブルも使えます。尤も、このDACに対してケーブルの方が高価になりそうですが。
電源はUSBバスパワーのみ対応しており、電源入力等はありません。
入力端子の近くの穴は、電源・動作インジケータです。これは、次に述べるように問題があります。
インジケータLEDについて
インジケータのLEDが眩しすぎるという問題があります。ケースの穴から何も介さずに光が飛んでくるというのもあり、かなり眩しい。しかも再生時は点滅するという素晴らしき仕様。暗所で使うと、あまりの明るさと点滅でディスコ状態です。さらにたちの悪いことに、LEDの色は青で、目が痛くなる色です。
基本的には、黒ビニールテープなどでの封印が推奨されます。
光らせたときの写真をご覧ください。写真でもなんとなく眩しさが伝わると思います。
外観 総評
外形はただの箱で、仕上げはヘアラインに黒アルマイト。部品の合わせがあまり良くないので、高級感はありません。
LEDが眩しいのはどうしようもない。オペアンプ以前にLEDの交換をした方がよいでしょう。
(後述しますが、オペアンプは簡単に交換できます。)
オーディオ機器としてはかなり小さいので、設置すると見えないような感じになりやすい。本体も黒ですし、黒子に徹するようなデザインなのでしょうか。
音について
詳細
音は、全体的にはピラミッド型。相対的に低域が多めで、高域が少なめ。解像度が低いというか、分離感が悪いというか、モヤがかかったような雰囲気もあります。
低音は膨らみぎみで、締りに欠けます。この低音が音に関する最大の問題点で、全体の雰囲気を決定している気がします。
中域は引っ込みぎみ。高域は出てはいますが、超広域の伸びが悪い感じがあります。当然スッキリした感じではありませんが、しかし濃いというわけでもない。アナログっぽいと言えば、褒め言葉になるでしょうか。
ここまでだとドンシャリのような書き方ですが、筆者の感想はあくまでピラミッド型です。というのも、中域が引っ込みぎみに感じるのは、そのモヤがかかったような雰囲気によるものだと感じているからです。中域は解像感が上がると、出っ張ってくるような感覚があります。
CDに対するレコードのような音です。低域が膨らみぎみで、超広域の伸びが悪いというのは、レコードの特徴そのものと思います(アナログ好きには怒られそうですが)。CD音源でもレコード感が味わえる。しかし、CD音源ならではの鮮烈な雰囲気がありません。このあたりをどう思うかは人それぞれでしょうが、CDやハイレゾ音源でもレコードっぽく聴ける機器はあまりない気もします。
まとめ
低域が膨らみぎみ、中高域がややナローなピラミッドバランスの音です。
CDやハイレゾ音源を比較的レコードらしく聴ける、ある意味で貴重なDACです。
機能性・操作性
機能性
DACとDDCの機能があります。
DDC機能は、このDACの音を気に入らなかったが、手持ちのS/PDIF入力のみのDACに入力したい、という実用的な使用法であれば、十分に機能しうるでしょう。
PCとの接続の際、OSに関わらず、ドライバー無しで認識できます(最近はWindows 10でUSB Audio Class 2.0に対応したので、ドライバーが必要な機器でもドライバー無しで使えるようになり、あまりOS間の差を意識する必要もなくなってきてはいますが)。
Windowsに接続した場合、「VIA USB Audio」という名前で認識されますが(これは搭載しているUSBレシーバーICの関係です)、まれに「iAP~」というものに誤認識されることがありました。その場合はUSBポートを替えるなどで正常に認識されました。
スマートフォンにOTG接続でも動作します(Android 11で確認)。少々大柄なポータブル機器としてもよいかもしれませんが、電源をスマートフォン本体からとるので、バッテリー消費が早まる可能性があります。
操作性
本体からは一切の操作ができません。電源もUSBで接続すると自動で入ります。
分解
分解した中身はこちら。公式のものとほぼ同じですが。
出力段にはオペアンプが3つも付いています。FX-AUDIO-お得意のTIのNE5532Pが2つに、同じくTI TL072が1つ。NE5532Pの方はデュアルモノラルで使っているのかもしれません。
オペアンプはソケットに装着されているので、簡単に交換できます。ただし、外す際は垂直に引き抜かないと、足が曲がったり折れたりして面倒なことになります。こういうICを引き抜く専用工具があるので、そういったものを購入するのも手です。
DACはWolfson WM8741です。これが最大の売り。DAC ICだけ高級にしても、かえってボトルネックが生じ、あまり良くない気もしますが。
オーディオはバランスが大事です。オーディオシステム一式を揃えるにも、1つだけ高級なものを買い、その他を安価なものにするというのは、あまりうまくいかないことが多いと思います。それなら、全部安価なもので揃えた方がまとまったが楽しめる。話がそれてきましたが。
USBレシーバーはVIA VT1792Aです。これもいつもの感があるもので、FX-AUDIO- (NFJ)の比較的安価でないものに付いている印象があります。
電源はXLSEMI。これも恒例です。 FX-AUDIO- (NFJ)は電源に難があると感じるものが多いので、XLSEMIの電源が良くないのかもしれません。
その他
ポップ音
サンプリング周波数が変更されるときか何かのタイミングで、結構な音量のポップ音が入ります。「ボッ」などの低音系であればまだ良かったのですが、実際は「パァン!!」という勇ましい音が鳴ります。
そのようなタイミングでは音量を下げることが推奨されます。
電源について
このDACの音については前述の通りですが、モッサリした印象なのは、やはり電源に問題がある気がします。USBバスパワーでは、本体内の電源にいかに凝ったところで、限度があるでしょう。
とはいえ、バスパワーのものでもスッキリしたサウンドのものも多くありますので、チューニングの問題もあると思います。
しかしながら、バスパワーのDACでこれは良い音だなァというものに出会ったことはありません。
結局のところ、オーディオは電源に終始すると思っています。電源は素子の実力を引き出す土台みたいなもので、土台がショボくてはどうしようもないということです。現に、高級なオーディオ機器のアピールポイントには、必ずと言ってよいほど電源についての言及があります(高級な機器が必ずしも良いものであるとは限りませんがね)。
総評
小型の単体DAC/DDCです。音はアナログライクな感じ。CDやハイレゾがデジタル臭いと感じるのであれば、購入を検討する価値があります。
オペアンプを交換して遊べます。沼にハマりやすいので注意。
音以外のツッコミどころが多い。眩しいLEDとポップ音のことです。LEDはビニールテープでふさげばよいだけですが、ポップ音は自力でどうしようもありません。たかがたまに鳴るポップ音だと思われるかもしれませんが、音を出すための危機から雑音が出るというのは、問題にせざるを得ません。ホワイトノイズなどであれば許せますが、破裂音はたまったものではありません。
とはいえ、たまに鳴る(おそらくはサンプリング周波数変化時)程度ですので、気にしなければそんなに気にならないかもしれません。
一応ポータブル使用もできますが(上述)、後段に単体ヘッドホンアンプなどを入れる必要があるので、冗長なシステムになりやすいと思います。
本記事の内容は以上です。
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