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ONKYO A-922MLTDの修理・レビュー

ONKYO A-922MLTDの修理・レビューです。

これは過去に修理とレビューをしたA-911MLTDの直接的な後継機種と思われます。ハイコンポのINTEC 275シリーズのアンプのようです。

しかし、自分から探してオークション等で手に入れたわけではありません。行きつけのハードオフに行ったら、やはりジャンク扱いで、911MLTDと同じ値段(税抜2000円)、しかも今回はリモコン付きで販売されていました。このような運命的な出会いをしてしまっては、実際のところ見た瞬間に買うと決まっていますが、ほぼ同じものを持っているしな、と一瞬購入をためらうふりをした後に、即購入してきました。
ジャンクの理由も911MLTDと同様で、入力切り替えが勝手に切り替わるとのこと。

これもやはり硬質な音ですが、色付けの少なさが特徴です。やや美音の雰囲気もあった911MLTDと比べると、よりダイレクトな音作りで、フラット感あるいはモニター感が強い音に仕上がっています。

修理

修理のついての内容です。基本的にはA-911MLTDとほぼ同じ構造なので、詳細を知りたい場合はそちらの記事を参考にしてください。

故障内容の確認

まず、購入当初の様子がこれです。今回は珍しくリモコン付き。正面はあまり汚く見えませんが…

当初の様子 正面

背面は見事にホコリが積もっています。

当初の様子 背面

まずは、カバーを開けて電源等に異常がないか確かめましたが、問題はなさそうでした。ヒューズは無事ですし、電解コンデンサの液漏れや部品の焦げ等もありません。

そこで、一度電源を投入し、故障内容を確かめます。電源投入後に入力切り替えをいじると、ジャンクの原因として書かれていた内容の通り、入力が勝手に切り替わります。

故障の状態

これは入力切替用のロータリースイッチの接点不良が原因です。この故障は、以前修理したA-911MLTDと全く同じなので、簡単に修理できるでしょう。

修理

分解して修理していきます。基本的な要領はA-911MLTDと同じ。異なる部分や気になった部分だけ紹介します。

前面を剥ぎ取った後のメイン側です。ホコリがすごい。
A-911MLTDと非常に似ていますが、実はほぼ全てが異なります。基板自体は同じもののようです。

メイン基板周辺

メイン基板の裏面です。全体的に”ケチはんだ”で、割れかけのところが多かったので、ほぼ全面的にはんだを盛り直しておきました。

メイン基板 裏面

次は前面部。これが問題のロータリースイッチです。

前面基板 表

基板の裏面に、カスタムマイコンと思しきものが付いています。A-911MLTDではスルーホールタイプの巨大なICが付いていましたが、922MLTDでは小型化し表面実装になったようです。

前面基板 裏

問題のロータリースイッチと、動作モード切り替え用スイッチを取り外しました。古いアンプの物理スイッチは全て点検しましょう。中の接点が黒くなっており、まともに機能しなくなっているものがほとんどです。

物理スイッチズ

入力切替用はこんな感じ。まあまあひどい。

入力切替用スイッチ 分解後

モード切り替えスイッチはこんな具合です。ギリギリ通電はしそうですが、ガリが出たり不安定な動作だったりしそうです。

モード切り替えスイッチ 分解後

これらの接点をキレイに磨きます。ピカールで磨いた後に、食器用洗剤で洗いました。

接点磨き後

あとは元通りに組み立て、基板に戻すだけです。

全体的に掃除し、入出力端子をサンポールでキレイにしたりした後に、組み立てました。本体はこれで終了。

リモコンは壊れてはいませんでしたが、汚かったので分解掃除しました。分解には結構手こずりました。

リモコン 分解後

基板以外は全て、マジックリンで徹底洗浄しました。念のため、基板の導通部もアルコールで拭いておきました。乾いたら、組み立てて完成です。

修理はこれで終了です。

その他

中身で気になったところをピックアップします。

まず、組み立て後の中身はこう。

整備後の中身

青いブロックコンデンサはA-911MLTDと同じものと思われます。Integraシリーズ用に開発したらしいエルナーのカスタム品です(Integraと印字されています)。トランスも相変わらずAEIと書いてあるもので、外観もほぼ同じ。

電源入力部には、トーキンのフェライトコアが付いています。メーカー製でこのようになっているのは、あまり見かけません。

フェライトコア部

出力トランジスタは911MLTDと異なり、サンケン2SC3284/2SA1303です。サンケンなのは同じなので、こだわって同じメーカーを使っている可能性はあります。また、エミッタ抵抗の値も変わっており、非常に多くの部分が地味に変わっています。

出力トランジスタ付近

出力リレーはOEGと書いてあるもので、911MLTDと異なります。他は高見澤。OEGリレーはTE Connectivityなる、スイスに拠点があるアメリカの会社の製品のようです。音の関係でこれにしたのか、単に安かったから採用したのかは定かではありません。

出力リレー付近

修理 総括

故障の原因は入力切替用のロータリースイッチの接点不良でした。以前も修理したので、修理は非常に簡単でした。とはいえ、筆者の場合、中古アンプをメンテナンスする際は物理スイッチの接点を全て磨くので、実のところ変わった作業をしたわけではありません。

外観・仕上げ等

外観や仕上げについてのレビューです。

前面 その1

前面 ドアを閉じた状態

前面。ドアを閉じた状態では、大きいツマミが3つのみのシンプルな外観です。

ツマミの周囲やメーカーロゴは金色で、当時の流行りが伺えます。90年代は金色のアンプやプレイヤーが多くラインナップされていたらしい。

電源ボタンは相変わらずのプチプチタイプ。安っぽいフィーリングです。

仕上げ

前面はアルミで、きめ細かいヘアラインのアルマイト仕上げです。その他は鉄で、塗装や防錆処理などで仕上げてあります。

ツマミはアルミ削り出し。加工痕のような同心円状の凹凸があります。

前面 その2

前面 ドアを開けた状態

ドアを開くと、このようになっています。

トーンコントロールやバランス用のツマミはプラ製ですが、塗装されています。小さいツマミですが、操作しやすい形状です。このあたりは、着実にA-911MLTDから進化している部分です。

スピーカー出力切替ボタンや録音出力切替ボタンは、やはりプチプチタイプのボタンです。

発光

スタンバイ状態

電源ケーブルをコンセントに接続すると、このように赤く光り(電源ボタン下)、スタンバイ状態になります。内部でコンセントからの給電を切ったり入れたりする、主電源スイッチみたいなものはありません。

電源スイッチを押し、電源を投入すると次のようになります。

電源投入時

基本的には黄色に光り、明るさは控えめです。ドアで隠れる部分のインジケータは録音出力の状態を表すもので、現在再生している入力を出力に流す(つまり”SOURCE”)場合のみ緑で、その他の特定の入力を出力に流す場合は赤に光ります。

後面

後面

後面。入出力端子などがあります。

入力はフォノ・チューナー・CD・ライン1・ライン2の5系統にも対応しています。フォノ入力はイコライザアンプのゲインが高く外来のノイズを拾いやすいためか、入力ショート用のプラグが付いています。

入出力はテープ・MD・プロセッサに対応しています。MDというのが時代を感じさせます。プロセッサは、おそらくDSPで音をいじる機器のことです。

サブウーファー用のプリアウトがついています。小さいブックシェルフをメインに2.1ch構成にすることも考慮されているようです、しかし、このアンプの駆動力から考えると、その必要はありません。

入出力端子はサンポール漬けにしてキレイにしたのですが、なぜかあまり輝いていません。修理後にしばらく使用してから写真を撮ったので、その間に問題が起きた可能性もあります。

入出力端子付近

スピーカー出力は2系統あり、バナナプラグにも対応する端子が付いています。

この背面をよく見ると、カバーを固定しているネジが中央付近と右側にしか付いていないことに気づくと思いますが、最初からその状態でした。左側にもネジが入りそうなところがありますが、ネジで留められていた痕跡がないので、前オーナーが紛失したわけではなさそうです。どうにも奇妙ですが、この方が音がしっくり来たとでも言うのでしょうか。
なお、中央のネジのみにプラのワッシャーのようなものが入っています。やはり、このあたりのネジで音をチューニングしたのかもしれません。

側面・上面

側面と上面

側面と上面です。必要以上というくらいに、通気孔が開いています。特に側面のものは必要なのでしょうか。まさか、これもチューニングの一環なのでは…?

カバーはかなり薄いシャンパンゴールドのような色で(画像で黄色っぽく見えるのは光の加減です)、やや粗めの表面です。

底面

底面

底面。通気孔とインシュレーターがあります。

底面部品は、A-911MLTDとは異なるものです。それくらい流用してもよさそうですが、一体なにがそこまでさせるのでしょうか。

インシュレーターは白い樹脂で、911MLTDと同じものでしょう。コーリアンでできているらしい。

ボリュームツマミ

ボリュームツマミ
ボリュームツマミ 裏

ボリュームツマミです。非常にずっしりしており、金属塊という感じ。本物かどうかはわかりませんが、切削の加工痕のようなテクスチャです。

数字が書いてある部分はテーパーがかかっており、文字が読みやすくなっています。A-911MLTDではこのような工夫がなかったため、文字がまともに読めるものではなく、飾りでしかありませんでした。細かい部分が着実に改良されているように見えます。

外観 総評

ドアを閉めればシンプルな外観で、基本的な操作しかできないようになっています。このようなデザインは好みです。

しかし、先代と思われるA-911MLTDのほうがまとまりのあるデザインだったとも思います。ツマミの削り出しの雰囲気はカッコいいのですが、フロントパネルの質感とマッチしていない感覚もあります。各部の金色の部分も、やや蛇足感があります。

全体的にはA-911MLTDと似た外観ですが、ほとんど全ての部分が細かく異なります。その情熱は一体どこから湧いてくるのでしょうか。このころのオンキヨーはイケイケだったのかもしれません。

音について

音についてのレビューです。

詳細

全体的には、硬質で高解像度な、カッチリしたタイプの音です。

全帯域が遠慮なく放出され、低音から高音まで全て押し付けて来る感じ。そういう意味では、絵に描いたようなプロ用機器のごとき音でもあります。

低域は駆動力がものすごく、それに伴う押し出しの強さもあります。
中高域は硬質で、優しげな雰囲気はほとんどありません。音源なりの音を押し付けて来る感じです。

音場感はごく普通です。特に狭いとも広いとも感じません。

A-911MLTDと比べると、確実に基礎体力みたいなものは向上していると感じますが、方向性が異なるようにも思えます。911の方はやや美音系で華やかな感じがありましたが、922では味付けのようなものが非常に薄く感じられます。また、911は控えめに主張してくる感じですが、922は遠慮なく音を叩きつけてくるような雰囲気もあります。端的に言えば、911がリスニング用、922がモニター用のような方向性です。

A-911MLTDは”豪華絢爛”と表現していましたが、それに倣えば、このA-922MLTDは”質実剛健”といった感じでしょうか。

音について まとめ

硬質な音を遠慮なく叩きつけてくるような音のアンプです。小粒の筐体から、非常に力強い音が出てきます。硬質な雰囲気は実にオンキヨーらしい。

しかし、特有の味のようなものがほとんど感じられず、あまり面白みのある音ではないとも言えます。魅力度という点ではA-911MLTDの方が優れているかもしれませんが、より原音忠実的なのはA-922MLTDの方であるとも言え、必ずしもどちらが優れているとは言い難い感覚です。

機能性・操作性

機能性や操作性についてのレビューです。普通のプリメインアンプよりもやや多機能ですが、ラウドネス機能はありません。

機能性

モード切替

4種類のモード切替が可能。ボリュームの左のツマミで切り替えます。具体的には、(1)トーン、(2)ダイレクト、(3)プロセッサ、(4)CDストレート、の機能があります。

(1)トーンは、設定したトーンコントロールを使用し、入力切替で選択した入力を再生します。

(2)ダイレクトは、トーンコントロールを無効にし、 入力切替で選択した入力を再生します。

(3)プロセッサは、上記の通り、その時代に流行したDSPプロセッサ用の入出力を使用するモードでしょう。この機能は使ったことがないので予想になってしまいますが、そうでなければプロセッサ入出力用端子が存在する意味がありません。入力切替でプロセッサ入力は選べませんので。

(4)CDストレートは、CD入力端子からの入力のみを受け付けるモードです。おそらくは、内部的にあらゆる経路をパスし、限界までロスを減らすということになっているのでしょう。

REC OUTセレクター

録音出力にパスする入力の種類を任意に選択可能です。テープのダビングももちろん可能。OFFにすることもできます。

操作性

操作性に問題はありません。プリメインアンプの操作が難しいということもないと思いますが。

リモコンを使えば遠くから操作できるので便利です。

メインの操作系には昔ながらの大型スイッチ類を使っているので、操作フィールも申し分ない。

その他

ボリュームツマミの重さ

ボリュームツマミが非常に重厚なので、重さを量ってみました。

ツマミの重さ

その重さ、なんと91gです。ツマミを単体で持ってもずっしりとしています。A-911MLTDのものは84gなので、さらに重くなったようです。

総評

硬質な音を遠慮なく押し付けてくるような音のアンプです。小型の本体から出ているとは思えないほどの駆動力も兼ね備えています。ミニコンポ用のアンプとは到底信じられないほどです。

あまりに多い入出力系統も隠れた魅力です。

金色の部分は90年代の負の側面を感じなくもないのですが、非常に重厚なツマミ類の高級感があるうえ、トランスの大きさや厚手のシャーシからか大きさの割に重いこともあいまって、安っぽいものにはなっていません。

先代モデルと思われるものからほとんど流用されている部品もなく、このころのオンキヨーがいかに栄えていたかがわかります。

本記事の内容は以上です。

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