スピーカーテクニック

硬化したエッジの軟化方法 | ダイヤトーンや劣化し始めているゴムエッジなどに

ダイヤトーンなどの経年劣化で硬化したエッジを軟化させる方法を解説。
劣化し始めて柔軟性を失いつつあるゴムエッジも同じ方法で軟化できます。

定番のブレーキフルードを使用するやり方より、もう一歩踏み込んだ作業を行います。

エッジ軟化に関しては様々な方法を試しましたが、本記事に記載の方法が最もよい具合に仕上がりました。

すでに割れている、もしくは硬くなりすぎて割れそうなゴムエッジはこの方法で修理できません。その場合は張り替えてください。ただし後者の場合は、この方法を試してみるのもアリです。エッジの自作・張り替え記事も公開しています。

スピーカーのエッジ自作・張り替え | 画像つきで詳細に解説
スピーカーのエッジ自作および張り替えについて、各手順ごとの画像つきで詳細に解説しています。うまく作るコツや、プラスアルファで完成度を高める手順も紹介しています。

シンナーを使用するため、換気を良くして作業しましょう。

劣化の判別方法

念のため劣化の判別方法を記載しています。この記事を読んでいるということは、明らかに劣化したエッジを修復したいという方が大半でしょうから、基本的に読む必要はありません。

理屈の説明

この方法の理屈の説明です。筆者の予想(あるいは妄想とすら言えるかもしれません)が多分に含まれているので、読む場合は話半分にお読みください。基本的に読む必要はありません。

必要なもの

必要なものは次の通りです。下記の説明を読んで、用意してください。

必要なものの一覧

  • コニシボンドG17
  • ラッカーシンナー
  • 容器(シンナーで溶けないもの)
  • 筆(捨てても問題ないもの)
  • (場合によっては)
    ブレーキフルード
必要なもの

コニシボンドG17

昔ながらの黄色い接着剤です。
100円ショップに売っているので入手が非常に容易。画像のものはダイソーで買いました。
ホームセンターに行けば、大量に入ったものを安く入手できます。

乾燥が早く、接着面積がとれるならば強力に接着でき、普通に使うにも優秀です。シンナーで溶かしてとれるのも便利。ただし黄色いので、見た目を気にする場合は不向きです。

スピーカーユニットの各種部品の接着には、これに似たものが使われていることが多い(恐らくはダイアボンドのデービーボンドなど)。

ラッカーシンナー

ラッカー塗料用のシンナー。
有害ですので、体調の変化を感じたら作業をやめましょう。防毒マスクをするのも手です。

必ずラッカー用のものを用意してくださいラッカー薄め液などと書いてあるものです。
ペイント薄め液というものもありますが、それは灯油系の弱いシンナーで、このような作業には使用できません。

プラスチックを溶かして表面を荒らすので、取り扱い注意。

画像のものはニッペのラッカー薄め液です。
ホームセンターに行けば、塗料コーナーの端にひっそりと置いてあるはずです。

容器(シンナーで溶けないもの)

シンナーに溶けない材質の容器。
金属やガラス、陶磁器などの容器であれば問題ありません。プラスチックのものを使う場合は、ポリプロピレンやポリエチレンであれば使用できます。

小さいもので十分です。おちょこ程度の大きさがあればよい。浅い容器の方がよいでしょう。
プラモデルなどで筆塗りのときに使う塗料皿がオススメ。

画像のものは、和信ペイントのニスに付属していたもので、ポリプロピレン製です。
この容器では深すぎて作業しづらい。
塗料皿ももちろん持っていますが、作業するときに手元になかったもので…

筆(捨てても問題ないもの)

捨てても支障のない筆を用意しましょう。
ゴムを溶かして塗るので、洗浄が不足しているとゴムコーティングされてガビガビになります。

持っていない場合は、100円ショップで数本入っているセットを購入しましょう。画材コーナーに置いているはずです。

この作業の場合、平筆が使いやすいと思います。

画像のものは、ダイソーにて購入した5本程度のセットだったものの1本です。

ブレーキフルード

この界隈では言わずと知れたブレーキフルード。水っぽい粘性の液体で、わずかに生臭いような臭いがある液体です。

本来は自動車用品で、ブレーキにペダルからの力を伝達させる油圧機構の作動液です。

塗装面に有害なことでも有名です。塗装面についた場合は、素早く拭き取りましょう。

シンナーよりは接着剤を溶かしにくいので、比較的安全に劣化したダンプ剤を除去できます。

うまくいかない場合に(後述)、シンナーでダンプ剤を除去するのが嫌な場合はブレーキフルードを使ってください。基本的には必要ありません。

購入する場合は、高級なものである必要はありません。ブレーキフルードの値段はおおむね沸点によって決まります。高級なものほど沸点が高く、ハードブレーキングに耐えられる。これは今回の用途では関係のないことですので、安価なもので十分ということです。

ホームセンターで買う場合は、カー用品コーナーに置いてあります。

作業手順

作業手順の説明です。

しっかり換気しましょう
場合によっては防毒マスク(ホームセンターで取り扱っています)の着用も検討しましょう。

状態の確認

スピーカー本体からエッジを軟化させるユニットを取り外します。

特にダイヤトーンのウーファーの場合は必ず外して作業しましょう。エッジの表側はもちろん硬化していますが、裏にもダンプ剤が厚く塗ってあり、これもガチガチになっていることが大半です。

スピーカーを寝かせて、バッフル面が上を向くようにして外すのが安全です。ネジを外してもユニットが外れない場合は、布を巻いたマイナスドライバーなどでこじると外れます。どうしてもバッフル面を傷つけたくない場合は、ネジ穴のユニットとバッフル面の間をこじれば良いのですが、少々コツがいります。

本記事で作業するユニット

本記事で作業するのはA&D SS-830というスピーカーのウーファーです。
A&Dは「AKAI & DIATONE」で、スピーカーはダイヤトーン製です。
いわゆるミニコンポに付属していたものですが、そうは見えません。20cmくらいあるので、どう考えてもミニコンポではないでしょう。
この強度がありそうなダイキャストフレームが特徴的で、ダイヤトーン感をこれでもかと主張してきます。

表側
裏側。AKAIと書いてありますがどう見てもダイヤトーン製です
裏側アップ。エッジの裏にダンプ剤が塗られています

このウーファー、以前にブレーキフルードを使って軟化したものです。柔らかくなったのは間違いないのですが、カサカサしているというか、なめらかな質感でなく、あまり好ましい雰囲気はありませんでした。
そのため、本記事で提唱する軟化法を施します。

液を作る

シンナーにG17を適量入れ、筆で混ぜて液を作ります。
G17が多いと、乾燥した際の層が厚くなりますので、硬めに仕上がります。

筆者は液にとろみがつく程度にしており、G17をかなり少なめに入れています。

こんな感じになります

液をエッジに塗る

作った液をエッジに塗ります。
このとき、エッジを接着している接着剤につかないよう、慎重に作業してください。

塗る分量については、基本的に、表面が軽く濡れるくらいの薄塗りがよいでしょう。

  • ダイヤトーンなどのクロスエッジの場合は、あまり気にせずに塗って問題ありません。むしろ、少し多めに塗るくらいの方がよいかもしれません。
  • ゴムエッジの場合は、かなり薄く塗ってください。液が多いと、シンナーによってエッジが溶け、変形や穴あきの原因になります。変形してきた場合は落ち着いて液を吸い取り、触らずに乾かすと悪化を防げます。

必要であれば裏側も作業します。裏側は液が溜まりやすいので、より注意してください。

画像は途中経過の様子です。
①がまだ塗っていない部分、
②が塗って乾き始めている部分、
③が塗った直後です。

塗った直後は濡れてツヤが出ますが、乾くと半光沢くらいに落ち着きます。

途中経過の図

塗った部分は乾くまで触らないようにしましょう。接着剤を塗っているので、かなりベタつきます。また、塗った直後はシンナーが飛んでいないので、かなり柔らかく変形しやすい状態です。この状態で触れると、変な跡がつく可能性もあります。

乾燥させる

乾燥させます。
夏場で2時間も置けば十分と思います。不安な場合は一晩置けば間違いありません。

乾燥すればベタつかなくなりますので、触っても問題ありません。

乾燥したら、エッジが柔らかくなったかどうか確認しましょう。
柔らかくなめらかな質感になっているはずです。

クロスエッジの場合は、完全に乾燥するまでは1周間程度かかるものと思われます。作業した直後から1日くらいは柔らかいままですが、その後一度硬くなり、3日目くらいから再び柔らかくなります(最初よりは少し硬くなりますが)。なぜこうなるのかはわかりませんが、硬くなったところで失敗したと思わずに、辛抱強く待ちましょう。

完成

これで完成です。
あとは元通りにスピーカー本体に組み込むのみ。ケーブルの極性を間違わないようにしましょう。

本記事で作業したウーファーはこのようになりました。
エッジのツヤが出て引き締まりました。副次的効果ですが。
写真では柔らかさを伝えられませんが、作業前よりねっとりなめらかな質感になりました。

完成図

クロスエッジの場合でうまくいかない場合は、下記をお読みください。

ゴムエッジでうまくいかない場合は、張り替えた方が早いと思います。張り替えの記事も公開予定です。

うまくいかない場合(クロスエッジのみ)

1周間程度経っても硬いままの場合は、シンナーかブレーキフルードでダンプ剤を少し落としてから、もう一度この方法を行ってみてください。

ちょっと待って!それ本当に失敗していますか?
特にダイヤトーンのウーファーは、かなりダンパーが固めに設定されていることがあり、コーンを押しただけではエッジが硬いままのように感じることがあります。きちんとエッジが柔らかくなっているかどうかを確かめてください。
また、最初からエッジが硬かったという可能性もあります。大抵のダイヤトーンのエッジはそもそも基材の布が硬いので、最初から硬めでしょうし、柔らかくするのにも限度があります。

どうしてもダメな場合は、ブレーキフルードを染み込ませて、余分な液を吸い取り、そのまま放置しても柔らかくはなります。これは定番の簡単な方法と同じです。

あるいは、完全にダンプ剤を落として塗り直す手もあります。これはかなり面倒で、エッジを張り替えた方が早いとすら言えます。これについては次に詳述しています。

最終手段

最終手段は、シンナーで溶かしたダンプ剤を完全に落とし、代替品を塗り直すことです。これについては手順を書くまでもありません。

これを行うと、エッジを接着している接着剤が剥がれたりするので、接着し直さなければならない場合もあります。そのようなこともあり、先述の通りかなり面倒であると言えます。

ダンプ剤の代替品については、これまたG17が活躍します。少なくとも筆者が試した限りでは、ダンプ剤を落とさずに軟化させたものと、完全に落としてG17を塗ったもので、同じような質感となったことを確認しています。ただし、多くの種類を試したわけではないので、もっと良いものがあるかもしれません。

その他

この方法はコーンツイーターのエッジにも使用できます。特にダイヤトーンのコーンツイーターはウーファーと同様に硬くなるエッジのものが多数です。ツイーターのエッジを柔らかくして効果があるのか、と聞かれると微妙ですが。

ソフトドームツイーターの硬化したものにも使用できると思いますが、これは音が大きく変わる可能性があるのでリスキーです。

本記事の内容は以上です。

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