スピーカー

ダイソー USBミニスピーカーのレビュー:中域重視の音です。極めて。

ダイソーのUSBミニスピーカーの無駄に詳細なレビューです。

取るに足らないようなスピーカーですが、本サイトのフォーマットに従って大真面目にレビューします。

簡単な改造も取り扱っています。

外観・仕上げ等

全体

全体図

手のひらサイズのスピーカーです。バッフル面には小さいくぼみが無数についています。おそらくデザイン上のものでしょうが、音の反射を抑制しそうな雰囲気もあります。実際にそのような効果を狙ってバッフルに溝やくぼみをつけたスピーカーがあったような…

ユニットは銀色でプラスチック感のある仕上げですが、一応紙コーンのようです。紙コーンに逆ドーム形状のプラスチック製の振動板を貼り付けています。
エッジはビニールのような質感のものですが、コーティングしたウレタンエッジのようにも見えます。

それにしても、こういうツルッとした見た目のユニットは個人的に嫌いです。HiViのユニットやモニターオーディオは筆者には受け付けられません。

仕上げ

仕上げはプラスチックそのままです。塗装などされているはずもありません。

背面

背面

背面にはボリュームがありますが、どちらに回すとどのように音量が変化するのか書いていません。そのため、筆者が油性ペンでしるしを書きました(うっすら見えると思います)。これは設計上の欠陥と言えるでしょう。

四隅の穴はネジ穴ですが、下の方の中心にある穴はバスレフポートのようになっています。

外観 総評

プラスチックです。

ユニットがこの見た目でなければ、もう少し印象が変わっていたかもしれません。しかし、このツルッと感のおかげで、ほんの少しだけ高級感が出ているかもしれません。

音について

概要

音は極めてナローで、中域しか出ていません。小径の割に高音も出ません。

次の図は、このスピーカーの音を感覚的に示したものです。測定したものではありません。

JBL Control 1 音の傾向

この図についての詳細はこちら。

Plastic Audio式の図の説明
本サイトにおける、スピーカーやヘッドホンの音の傾向を可視化した図の説明です。

以下は詳細な説明です。

周波数的な特徴

低音域

低域は出ない。完全に出ていません。男性ボーカルすら怪しいくらいです。人の声すらまともに再生できないスピーカーも珍しい気がしますが。

中高音域

中域は普通に出る。さすがに女性ボーカルはわりと普通に鳴ります。ただし艶感とかそういったものに期待してはいけない。鳴っているだけです。

少しシャカシャカ感があります。イヤホンの音漏れみたいな雰囲気です。少しなのでそこまで気にはなりませんが。

高域は出ない。これが艶感のなさの原因のような気もします。

音場感・定位感

音場は極めて狭い。左右をつなぐケーブルが短くて間隔がとれないというのもありますが。

定位は意外なほどにシャープです。フルレンジ1発なので当然ですが。

音について 総評

極めて中域重視、いや、一辺倒と言ってもよい音です。

そこまで変な音ではないので、なんでもいいから音が欲しいという場合には活躍するかもしれません。ディスプレイについているスピーカーよりはだいぶマシです。前面にスピーカーがついているテレビの音には勝てないと思います。

内部構造など

エンクロージャやユニット、回路基板などを紹介しています。

エンクロージャ

分解したところ

背面のネジ4本を外すと、簡単に分解できます。

エンクロージャはただのプラスチックです。中身はがらんどう。

バッフルは少し厚くなっています。音に貢献しているかは微妙ですが。

バッフルが固定されるついでにユニットも固定されるという合理的な設計です。

先述のように、一応バスレフ型のようです。計算上はポート周波数が185Hzです。ケーブルの通し穴などの気密性が皆無なので、実際はもう少し高い周波数で動作しているでしょう。

ユニット・回路基板

ユニットと回路基板 表
ユニットと回路基板 裏

ユニット

ユニットは5cmくらいのフルレンジ。
小径のフルレンジは低音が出ないので、フルレンジというのはどうかと思っています(このユニットの場合は高音も出ませんが)。低音から高音まで1発で対応できるからフルレンジなのであって、低音が出ないのは「フル」ではないでしょう。かといって大径では高音が出ないので、フルレンジとして許容できるのは7~14cmくらいなのではないかと思っています。蛇足ですが。

上述の通り、コーンの素材はプラスチックです。紙コーンに凹形状のプラスチック板が貼り付けられています。

フレームはペラペラの鉄プレス製。
鉄プレスのフレームは安っぽい印象ですが、鉄は非常に強度の高い材料で、さらにプレス(鍛造)されているので、かなりの強度があるはずです。まあ、このユニットの場合はペラペラすぎて強度もなさそうですが。

割合にマグネットが大きく、駆動力がありそうです。

このユニットを取るためだけにこのスピーカーを買ってもいいと思います。

回路基板

注目すべきは回路基板。なにやら2つのICが載っていますが、2つとも型番が同じです。そしてこのチップの型番を調べると、なんとモノラルアンプICです。つまりデュアルモノーラル。なんという豪華仕様でしょうか。
…というのは半分冗談で、ステレオアンプICを1つ買うより、モノラルアンプICを2つ買うほうが安かったのでしょう。本当にそんなことがあるのかはわかりませんが。

アンプICはLTK8002Dというもので、LTKCHIP TECHNOLOGYという深センの会社のもののようです。3W出力のAB級パワーアンプで、5V電源かつ4Ω負荷で3W出力時に、THD(全高調波歪率)が10%以下と書いてあります。すごい歪率です。ただし、最大出力でなければそこまで酷くないようです。1.8Wでは0.2~0.6%程度です。
データシートが中国語のものしか出てきません。謎です。

裏面には申し訳程度の電源用コンデンサとボリュームがあります。データシートの応用例にはパスコンがついていないのに、わざわざ付けてあります。また、こういうタイプのボリュームはガリが発生しやすいような気もします。

スピーカーケーブルが細い。ホームセンターで買える工作用の細線より細いくらいです。細すぎる電線は、100円ショップのエレクトロニクス機器にはよくあります。12個のSMDを使ったLEDライトは、1A近く電流が流れるにも関わらす、このスピーカーケーブルと同じようなもので配線してありました。

その他

ケーブル

ケーブルは次の画像のようになっています。

ケーブル

USBは電源のみ。ステレオミニから入力します。

USBは電源のみが配線されているので、パソコンに挿してもウイルスなどが侵入する心配はありません。

これらのケーブルは結合しており、使う人が好きなだけ裂くタイプです。入力と電源が遠い場合は、思う存分裂いてあげましょう。

外箱

外箱はこんな感じ。わりと最近に買ったので、ダイソーのロゴが新しいものです。

裏面には恐ろしいことが書いてあります。次の画像をご覧ください。

おわかりいただけただろうか。

なんと、周波数特性が35~20kHzとなっています。多くの方が、これをアンプICの周波数特性だろうと(ある意味好意的に)解釈していますが、アンプICのデータシートを見ても、周波数特性の記述がありません。ということは、スピーカーを含めた全体での周波数特性である可能性もあります。まあ、実際はアンプIC説が濃厚ですが。
ちなみに、35Hzというのは、30cmウーファーのスピーカーで-10dBくらいしか鳴らない周波数です。

改造

中身が空洞なのが気になったので、吸音材を入れてみます。

使うのは同じくダイソーのろ過ウール。

ダイソー ろ過ウール

見ての通り水槽用フィルターのろ材を想定しているものです。そのためペットコーナーに置いてあります。

「ウール」と書いてありますが、本物の羊毛のはずもなく、ポリエステルの糸を固めた人工ウールです。これ、メーカー製のスピーカーによく使われている吸音材に酷似しています。というかおそらく同じものです。筆者が別記事でポリウールと書いていたものです。
市販のスピーカーシステムにも使われている吸音材をショボいスピーカーに使います。リッチなこと極まりない。値段は税込み110円ですが。

これをちぎって、よさげな大きさにします。

よさげな大きさに

そして詰めます。

詰める

元通りに組み立てたら完成。

音は、少しあったシャカシャカ感が減り、聴きやすくなりました。なかなかよい具合です。低域は全く変わりません。

わざわざこのろ過ウールを買ってまでやる価値があるかどうかは微妙ですが、良くなることに間違いはありません。

現状はライトチューンですが、もう少しいじる予定もあります。

上記のいじる予定は変更され、その予定はなくなりました。色々やってみたところ、このユニットは高域が出ず、筆者の好みではなかったので、改造する気にはなれませんでした。
ショボいアンプもついていることですし、電池式にでも改造して回路の音を聞く機器にしようと思います。

と思っていたのですが、突然改造する気になったので大規模に改造しました。その記事はこちら。

ダイソーのものだけでまともなスピーカーを作る(USBミニスピーカーの改造)
ダイソーに売っているものだけでまともなスピーカーを作ります。ユニットは300円のUSBミニスピーカーのものを使いますが、その他の部分は全て作り直すので、実質的には自作スピーカーを作る記事です。

総評

中域一辺倒な音のスピーカーです。買う価値がないほど音が悪いということはありません。

こんなレビューを読むくらいなら、さっさとダイソーに行って買ってきたほうが良いと思います。税込み330円ですし。

ユニットがそれなりに使えそうなので、部品取り用としても買う価値があります。

本記事の内容は以上です。

COMMENTS コメント

  1. ryoさん より:

    詳細な分析、大変感服しました。結論ですが、仕様的にはステレオ出力でよろしいのでしょうか? ご返事は出来ればメルアドでIお願いいたします。自分なりに改造を考えます。

    • モソス より:

      コメントありがとうございます。管理人です。
      このスピーカー内部のアンプはモノラルが2個入っており、左右の信号がそれぞれに入力されます。つまり最終的にはステレオで出力されます。
      聴いた感覚においても、わずかながらに音場を感じられますので、ステレオだとわかります。