DACアンプ・DAC

Topping E30のレビュー:コスパは良し。解像度高いが温かみに欠ける音。

ToppingのDAC、E30のレビューです。

中華メーカーToppingのDACです。値段やスペック、カラーバリエーションから考えるに、SMSL Sanskrit 10thのライバル機を想定して発売したのではないかと考えています。1~2万円くらいの価格帯の、ちょっと良い機器を導入してみたいという人向けであろうシリーズです。

ヘッドホンアンプ等の付いていない単体DACで、旭化成のDAC AK4493を搭載しています。USBレシーバーはXMOSで、標準で提供されるドライバーがThesyconのカスタムドライバーなのも魅力です(XMOSレシーバーとThesysonドライバーはWindows環境では音が良いとされています)。

かんたんレビュー

長所
  • 高解像度でカッチリサウンド
  • 見やすいディスプレイ
  • 自動スタンバイ・起動が便利
  • 電源を好きに選べる
短所
  • デジタルっぽく温かみに乏しい音
  • 定位感・音場感が弱点
  • USBバスパワーには非対応
  • 音の電源への依存度は高い

外観・仕上げ等

外観や仕上げについてのレビューです。

前面

前面

前面。ディスプレイやタッチ式の操作部があります。

フロントパネルは透明な部品(ガラスではなく樹脂製です)が埋め込まれ、その後ろに印字があるタイプです。印字が剥げたりしませんし、なにより高級感があります。印字はグレーで控えめです。

右の四角く囲われて電源マークがある部分は、タッチ式の操作部です。スタンバイ中に短タッチで起動、電源ON中に長タッチで電源オフ・短タッチで入力切替です。その他の機能はリモコンからしかアクセスできません。

上面にはハイレゾ対応のロゴが付いています。これは日本発祥ですが、世界標準になりつつある気がします。しかし、ただのハイスペックな音源にハイレゾという名前を付けて、大げさに宣伝したのは日本のオーディオ界の恥のひとつです。

本体はアルミ製。細かめのブラストが施され、その上でカッチリしたアルマイト仕上げとしているようです。アルミ部分の完成度は良い。

起動し、入力を検知すると、次のようにディスプレイに表示されます。

起動時

ディスプレイが極めて大きく、非常に見やすい。表示は白とオレンジで、マニア好みの色でしょう。少なくとも筆者は好みです。しかも表示の明るさを3段階に変更できます。表示に対するこだわりがすごい。

この写真はDACモードでの場合で、現在再生している音源のサンプリング周波数が表示されます。プリアンプモードの場合、現在の音量が表示されます。

背面

背面

背面。入出力端子があります。

出力はRCAで、ごく普通にアンバランス出力です。

入力は同軸RCA、光角型、USB Bに対応しています。USBは昔ながらのBで、オーディオ用を謳うUSBケーブルの大半が使えます。マニア向けの配慮かもしれません。

電源は5Vで、普通のDCジャックです。汎用のACアダプタ等が使えますし、電源を自作する場合の親和性も高い。5VなのでUSB電源も使えます。詳しくは後述しますが、USBから電源を取るためのケーブルが付属します。

外観 総評

シンプルな外観で仕上げも上々、高級感があります。中華製品は仕上げが粗いという印象がありますが、それは過去のものになったのかもしれません。

ディスプレイの視認性がよく、色もオレンジで良い。

外観に関してはスキがありません。素晴らしい。あえて言うのであれば、オーディオ機器としての物々しさが足りないくらいでしょうか。しかし現代のデザインの流れからするに、この方向性が大多数にとって正解でしょう。

付属品

付属品は以下の3点です。

  • USBケーブル
  • USB-DCプラグ変換ケーブル
  • リモコン
付属品

USBケーブル

ごく普通のUSBケーブルです。パソコンなどの側がAで、機器側がBのタイプ。オーディオ以外ではプリンタ用として知られています。

長さは1.2mです。USBケーブルとしてごく普通の柔らかさで、決してしなやかではありません。

USB-DC変換ケーブル

USBから5V電源を取るためのケーブルです。スマートフォン用の充電器などが使えます。長さはこちらも1.2mです。

パソコンに挿してバスパワーもどきもできますが(通信用も含めて2ポート使用してしまいます)、せっかくなので充電器などを使ってあげましょう。その方が音に良い影響があります。Appleの充電器は比較的ローノイズで無難です。

リモコン

中華製品でよく見るタイプのリモコンです。汎用品なので使わないボタンも多い。

電源ボタンの左上に光りそうな部分がありますが、これは通常時にうっすらと光っており(言われないと気づかないほどの暗さ)、ボタンを押しているときに明るく光ります。結構明るい上に点滅するので、目障りな感じもします。

単4電池2本が必要です。リモコンにはマンガン電池を使いましょう。リモコンや時計のようにパワーが必要なく、長時間放置することが多いものには、マンガンの方が適しています。

音について

音についてのレビューです。

詳細

全体の雰囲気は弱ドンシャリかもしれません。少なくともカマボコ系ではなく、低域の押し出しがやや強いという観点から、どちらかと言えばドンシャリという程度です。
もちろん、計測器による実測は完全フラットです。アンプやDACはほとんどの機種でほぼ完全にフラットな周波数特性ですが、なぜかカマボコに感じたりドンシャリに感じたりします。

高解像度な音で、パリッとした現代的な音調です。個性のようなものは感じづらく、妥当な設計で部品にこだわらず作ったらこんな音が出た、という感じ。中華オーディオはこんな感じのものが多い。コストパフォーマンスは十分に良いと言えますが、より高価な機器と比べてこれを選びたいと思えるような魅力はありません。魂がこもっている機器ならば、安くともそれにしかない魅力があることもあります。

低音の押し出しや伸びは素晴らしい。しかし、高域の繊細さがやや物足りない感じです。細かいことを気にしないマッシブなサウンドとも言えます。

必要以上にエッジが立っている感じがあり、デジタルな雰囲気があります。そのせいなのか、温かみに欠ける音です。例えば、ボーカルの生々しさは感じにくい。音の悪い現代のポップスなどでは気にならないかもしれません。
なお、高解像度な音だからギラつきや温かみのなさを感じるわけではありません。解像度が高くとも柔らかく、温かみのある音を出す機器もたくさんあります。

音場は狭めで、定位も優れているとは言いにくい。コンパクトなステージにやや口元が大きく定位する感じ。

以上のレビューは、電源にAppleの1A充電器を使用したときのものです。これを自作のRコアトランスを使用しLM350Tを使ったリニア電源に変更すると、やや温かみが出てきて、定位もすっきりする感覚が得られました。電源への依存度は高いようです。

その他

DACのフィルタを6種類から選べます。このフィルタの違いによる音の違いはほぼないと言ってよいほどですが、聴き込めば違うのかもしれません。

筆者はその違いについてあまり興味が持てず、細かく聴き込んではいません。なお、このレビューを書くために聴いたときは、過渡応答が最も素直な5番目のフィルタを使っています(細かいデータが海外の有志により公開されています)。

音について まとめ

高解像度で現代的な音調で、押し出し感の強いマッシブなサウンドです。弱点はデジタル感とも言える温かみの感じづらさや、空間表現です。

このような音のDACはヘッドホン向きです。ヘッドホンはスピーカーと比べると空間表現の概念がほとんどないようなものなので、気になりづらい。実際、レビュー用に聴いたときはスピーカー環境で使用し、上記の弱点を感じたのですが、ヘッドホン環境で使用してみると、全く気になりませんでした。ヘッドホン用なら文句なしにオススメできます。

機能性・操作性

機能性や操作性についてのレビューです。

機能性

機能性は良い。かゆいところに手が届く機能が多くあります。

DACモードとプリアンプモードを切り替えられます。DACモードは出力固定です。プリアンプモードでは出力のレベルを変更できますが、最大でもDACモードと同じなので、下げることしかできません(プリ”アンプ”モードとはこれいかに)。とはいえ、出力レベルを変更できるのは便利です。
これらのモードを切り替えるには、電源オフ時(スタンバイ時)に本体のタッチ操作部を長押しします。電源オン時やリモコンでは切り替えられません。

ミュート機能があります。特にスピーカーシステムに接続する場合は便利でしょう。

前述のように、DACのフィルタを変更できます。こういう設定をユーザーに投げるのは筆者の好みではありません。メーカーが決めた自信のある音を聴きたいんです。

自動スタンバイ・起動を設定できます。この設定をオンにした場合、入力を検知すると自動で起動し、入力が無くなって一定時間すると自動でスタンバイに入ります。本体やリモコンに一切触れることなく使用することも可能です。これは便利。この機能をオフにすることもできます。

ディスプレイの明るさを3段階に変更できます。最も暗い状態では、ナツメ球のみを点けた暗い部屋でも眩しく感じない程度の明るさで、最も明るい状態では、非常に明るい部屋でも十分な視認性がある明るさです。

操作性

リモコンで操作するぶんには特に問題ありませんが、本体のタッチ操作部はあまり使いやすくありません。そもそも、スマートフォンなどの画面に直接触れるような感覚のもの以外で、タッチ式の操作が使いやすいものを見たことがない気がします。

その他

サンプリング周波数変更時のノイズ

サンプリング周波数変更時に「ポツッ」というノイズが入ります。そこまで大きくはないので、致命的な欠点ではないと思います。あまり頻繁に鳴るようなものでもありませんし。

どうしても気になる場合は、サンプリング周波数が変わるときにアンプなどの音量を下げれば回避できます。

総評

シンプルかつ高級感のあるデザインで、解像度が高く押し出しの強い現代調のサウンドを鳴らすDACです。まさに、現代のDACにふさわしい出来栄え。

ディスプレイの明るさを変更できるなど、細かい部分に配慮されている部分もポイントが高い。ひと昔前の中華製品ならば、光る部分は青く光らせてひたすら明るく、明るいほどイイとでも言いたげなものでしたが、それとは正反対のものです。ビルドクオリティも高く、もう昔の中華製品ではないと実感させられました。

コストパフォーマンスは高いと言えます。特有の魅力は感じづらい部分もありますが、万人受けするとも言えます。豪華なDAC ICなどの主要部品を使いつつ、比較的安価なのは中華の代えがたい魅力です。

特にヘッドホンシステムのDACとして検討している場合はオススメできます。

本記事の内容は以上です。

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