Focal Listenのレビューです。
仏Focalの最廉価有線ヘッドホン。ポータブル向けモデルを志向しているようです。Focalのヘッドホンと言えば、廉価モデルでも10万円しない程度という印象ですが、これはそこまで高価ではありません。筆者の記憶によると、通常価格は3万円程度で、生産終了間際は1万円程度に値崩れしていました。
フランスらしい謎だがスタイリッシュなデザインに、スピーカーメーカーらしいやや高音寄りの音が持ち味です。
※ このヘッドホンはすでに生産終了しています。
外観・仕上げ等
外観や仕上げ等のレビューです。
全体
全体。シームレスに繋がるヘッドバンドとアーム部が特徴的です。ヘッドバンドの長さを調整するために伸ばすと、デザインが崩れます。見るぶんには最小の状態がよいでしょう。
ヘッドバンド~アーム部はつや消し黒、ハウジングは光沢のあるガンメタリック。イカした色合いです。
アーム部の横に大きくメーカー名が彫られており、ハウジングにはメーカーのロゴマークがあります。自己主張が強い。ハウジングのロゴマーク部はアルミ製です。
ヘッドホンの名前がハウジング側面に書かれています。ここまで大きく、しかも露出する位置に書いてあることはあまりありません。
ケーブルは片出しです。
上面
上面。ヘッドバンドにはメーカーの惹句である”Listen Beyond”とあります。通常ならここにメーカーロゴを表示しますが、それはアームにあるので、その代わりにこれを表示したということなのでしょうか。
イヤーパッドの中は赤い。こんなところに差し色を入れるとは、謎です。しかし、この赤がなければ、この写真や上の全体写真の見栄えは大きく異なるでしょう。地味ながらニクいヤツです。
バッフル面
イヤーパッドを外したところ。ドライバーの周りにスポンジが貼ってあり、さらにその周りに低音調整用と思われる和紙のようなものが貼られています。
ドライバーは半透明の銀色で、チタンコーティングかなにかでしょう。
折りたたみ
このヘッドホンは折りたたむことができます。この状態だと、意外なほどにコンパクトです。
外観 総評
メーカー名はヘッドバンドに描くとか、わざわざメーカーのスローガンはヘッドホン本体に表示しないといった常識を正面から突き破ってくる謎のデザインです。しかし、全体で見ればバランスが取れています。しかもなかなかにオシャレでスタイリッシュです。これがフレンチデザイン。
付属品など
付属品は次の3点です。
- マイク付きケーブル
- キャリングポーチ
- 航空機アダプタ
マイク付きケーブル
マイク付きのケーブルです。このケーブル1本のみ付属しており、通常のマイクなしのケーブルはありません。
ケーブル本体はやや細めですが、しなやかで良い質感です。
ヘッドホン側のプラグは3極のステレオミニで、ヘッドホン本体にロックできる機構付きです。入力側のプラグは4極のステレオミニ。マイクとリモコン信号用に1極増えています。
マイク部とリモコンが離れた位置に付いています。マイク部はちょうど口元のあたりにくるようになっており、リモコンは操作しやすい位置にあります。
キャリングポーチ
携帯用のポーチです。クッション性があるファブリックの仕上げ。下手な合皮よりは上品です。
ヘッドホンを折りたたんだ状態で、ぴったり入る大きさです。
ポータブル使用を想定しているためか、このポーチの完成度は非常に高い。
航空機アダプタ
航空機用のアダプタ。わざわざメーカー名が表示されている専用品です(その表示はプラグ部の反対側の面にあります。上の画像では死角になっています)。
筆者は使ったことがありません。
音について
音についてのレビューです。
概要
全体的にはやや高音寄りのフラット系です。よく聴くと、デジタル感があるというか、艶がなく必要以上に粒が立っているような感じもあります。
次の図は、このヘッドホンの音を感覚的に示したものです。
この図の詳細はこちら。
周波数的な特徴
低音域
低域は少なめですが、そのぶん締まりがあります。比較的小型の密閉型スピーカーのような音です。
低音としてよく感じられる帯域は少なめですが、それよりさらに低い、振動として感じられるような超低域はよく出ています。
中高音域
中域はややダイレクト感に乏しく、少なくともウルトラクリヤーという感じではありません。距離を感じるというか、エアーな感じがあります。しかしこれは、意外にも否定的に感じることはなく、ヘッドホンの割に適度な距離がある、くらいに感じます。これは後述の定位の関係もあるかもしれません。
中高域の刺さるような帯域はよく出ていますが、全く刺さりません。不思議な感覚です。チャラチャラしたような音を平気でクリアに鳴らしますが、それでいて刺さる気配がありません。この部分は高度に制御されているように感じます。
超高域は控えめで、倍音成分をうまく出し切れていない感じがあります。そのせいで艶感がないのかもしれません。
中高域全体は前述のように、必要以上に粒が立っており、艶感がない印象で、デジタルな雰囲気を感じます。例えばロックやメタルの歪ませたギターのサウンドが、必要以上にチリチリした印象です。また、ボーカルは人間味を感じにくく、高度な合成音声のようにすら感じられます。
音場感・定位感
音場は普通。耳よりやや外側まで空間を感じます。
定位は良い。バッフル面が傾斜しているタイプではないにもかかわらず、やや前方に定位します。このような定位感のヘッドホンは他に見たことがありません。
音量・鳴らしやすさ
音量
音量は比較的大きい。筆者の場合、iPad直挿しでも半分程度の音量で十分でした。また、出力の小さいゲーム機(Newニンテンドー2DS LLで検証)でもボリューム感に余裕があります。
鳴らしやすさ
鳴らしやすい。iPad直挿しでも音が破綻しません。多少低音がゆるくなる程度で、まともな上流に繋いだ場合と大差はありません。
音について 総評
軽く聴く程度だとやや高音寄りのフラット系と思いますが、よく聴くとデジタル感のようなものがある独特のサウンドです。このヘッドホンをリファレンスにするのは危ない気がします。
装着感
装着感は良いとも悪いとも言い難い。
イヤーパッド
イヤーパッドは楕円形。内側の寸法は、長軸が65mm、短軸が45mm、深さは20mm程度です。あまり大きいとは言えませんが、深さがあるので、快適に装着しやすいイヤーパッドと思います。
表面は上品な合皮です。
内部のスポンジは低反発系ですが、やや硬めです。
ヘッドバンド
ヘッドバンドの頭頂部に当たる部分にはゴム部品が付いていますが、あまり柔らかくはありません。頭頂部への攻撃力はそれなりにあります。
使っていれば頭頂部の形に跡がついて、攻撃力は少し弱まります。
側圧
側圧はやや強め。これはポータブル使用を想定しているからとも考えられます。
とはいえ結構強めなので、苦手な人には受け入れられないでしょう。
装着感 総評
装着感に関しては、ここが良いというポイントが特にありません。しかしひどく悪いとも言えないので、良いとも悪いとも言えないという感想に行き着きます。
少なくとも、頭頂部への刺激が嫌いな場合、あるいは側圧が強いヘッドホンが苦手な人には厳しいと思います。
携帯性
携帯性は比較的良いと思います。
持ち運びしやすさ
可搬性は高い。折りたたみ機構によりコンパクトになり、しかもぴったりサイズのポーチが付いています。
難点を挙げるとすれば、薄くならないことでしょうか。折りたたんだ状態はごろんとしており、薄いバッグには入らないかもしれません。
外部遮音・音漏れ防止
遮音性や音漏れ防止性能は優秀です。
しかし、空気穴は開いているので、大音量でも漏れないとは言えません。通常のリスニング時のような比較的大音量のまま、バスや電車で使うのはやめた方がよいでしょう。
総評
フレンチデザインで独特の音のヘッドホンです。外観と出音がうまく一致している感じもあります。
鳴らしやすく音量も大きい、携帯性が高い、遮音性が高く音漏れも少ないなど、ポータブル向けとしては完成度がそれなりに高いと言えそうです。コンセプトに見合ったものには高評価を付けられます。
個人的にはなかなか面白いヘッドホンだと思っていて、気に入ってもいるのですが、それをうまく文字に起こせないものです。所有する人にしかわからない面白みがあるのかもしれません。生産終了品の所有欲を煽るのはあまり褒められるものではありませんが。
本記事の内容は以上です。
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