デノンのヘッドホン、AH-D1100のレビューです。
デノン現行モデルの最下位機。前世代からあるもので、AH-D1200と世代交代するかと思いきや、なぜか最廉価モデルとして続投しています。
公式サイトによると、希望小売価格は税込19800円ですが、実売は6000~7000円程度です。これは構造的な問題によって壊れやすく(詳細は後述)、値崩れした結果と思います。一応、注意していればそこそこ長くは使えます。
かんたんレビュー
外観・仕上げ等
外観や仕上げについてのレビューです。
全体
全体。ヘッドバンド周辺が細く、華奢な雰囲気です。
デノンお得意の黒と銀のツートンカラーが映えます。
仕上げ
全体的な材質はプラスチック。ハウジングの表面だけはアルミで、裏打ちのプラスチックが薄いアルミ部品に覆われている構造になっています。
銀色の部品は塗装仕上げで、黒のプラ部品は無塗装です。微妙に安っぽい。
側面
側面。ハウジングは楕円形で、角度がついているタイプ。丸みを帯びてツルッとした仕上げで、メーカーロゴがぽつんと印字されています。
LRの表示は小さく見づらいものですが、ハウジングの傾斜があるので、左右を間違って装着することはあまりないと思います。
上面
上面。ヘッドバンドはごく普通の合皮。柔らかく加水分解しやすいタイプにも見えます。
バッフル面
イヤーパッドを外すとこのようになっています。いかにもプラスチックで安っぽい。バッフルは傾斜しています。
イヤーパッドはツメで引っかけてあるタイプ(イヤーパッド側にツメを引っかける硬い部品がついている)なので、引っ張れば外せます。
ドライバーは半透明の黒っぽいもの。非常に柔らかく、カサカサしたいかにもPET膜という感じではありません。
問題の部分
このヘッドホンは、ヘッドバンドのヒンジが折れる故障が頻発することで知られています。これが原因で値崩れしているはずです。
その部分を分解しました。
軸は金属製なので大丈夫ですが、その周りのプラ部が折れたり、もしくは穴の方が折れるという症状が多いようです。
確かにこれは、見るからに折れそうな具合です。全体的にもう少し肉厚にしていれば、だいぶ違ったでしょうに。
できるだけもげる方向に負荷がかかりにくいように、シリコングリスを塗って元に戻しました。グリスによって摩擦力を減らせば、もげる方向の力が回転方向に変換されやすくなりますので、多少マシになる気がします。
シリコングリスにしたのは、プラスチックを侵さないからです。それ以外の大抵のグリスはプラスチックに害があり、もろくなったり割れたりしやすくなります。
外観 総評
デノンらしい色合いで華奢なデザイン。形状はダサくないのですが、安っぽさは否めません。定価で買ったなら発狂モノです。
ヒンジが折れやすいのは仕方がないので、できるだけ負荷をかけないようにケアして使うのがよいでしょう。
付属品など
付属品は次の4点です。ただし、本体に付属のケーブルを付属品に含めます。
- ケーブル(本体に直付け)
- 延長ケーブル
- 標準プラグ変換アダプタ
- キャリングポーチ
ケーブル
本体に直付けのケーブル。左右両側から出ているタイプで、長さは1.3mです。
ケーブルの外皮はさらさらしていて、ややゴムっぽい質感。ここはあまり安っぽくはない。
2本のケーブルが平行にくっついた構造です。曲がり方にクセがあるので取り回しはイマイチですが、4芯なので音のためには良いでしょう。
プラグはステレオミニで、取手が大きくアルミのスリーブも付いています。ここはなかなかの高級感です。本体の安っぽさがあるので、ちぐはぐな印象があります。
延長ケーブル
延長用のケーブル。長さは3.5mあります。
ケーブルからコネクタまで、本体についているケーブルと同じものを使っているようです。
標準プラグ変換アダプタ
ステレオミニプラグを標準プラグに変換するアダプタ。
付属品として一般的なものと微妙に違うもので、それよりやや高級感があります。
キャリングポーチ
携帯用のポーチです。
厚手の合皮で、妙に質感が良い。ただし、刻印などは一切ない完全な無地です。
このヘッドホンは次のように折りたたむことができますが、この状態で非常にぴったりと入るサイズ感です。ケーブル類はヘッドバンド内に収めるのがよいでしょう。
折りたたんでポーチに入れると、非常に薄くなり便利です。B5サイズ・300ページくらいの本と同じくらいの感覚で持ち歩けます。
音について
音についてのレビューです。
概要
全体的にはフラットに低音を盛った感じ。ただし、これはイヤーパッドを完全に密着させた状態での評価です。メガネの上から装着するなど、隙間を空けて装着すれば低音が減り、非常にバランスが良くなります。
次の図は、このヘッドホンの音のイメージです。この図の詳細はこちら。
以下、イヤーパッドに隙間を空けずに装着することを「メガネなし」、隙間を空けて装着することを「メガネあり」と表記します。
周波数的な特徴
低音域
低域は、メガネなしの場合はかなり多い。しかし、この状態でもボーカルに被ったりはせず、嫌味な低音ではありません。しかし、いかんせん多すぎる。
メガネをすると、途端にバランスが良くなります。他の帯域や低音の質はそのままに、量だけが減る感じ。
低域の質は適度に柔らかさがあり、安心感があります。締まっていてソリッドだという感覚ではなく、かといってフニャフニャすぎて気に入らないというわけでもありません。ちょうどよい感じ。
なお、このメガネをかけた上から装着して隙間を空けるという方法は、Amazon上のレビューで見られる「ハウジングに穴を空ける改造法」とほぼ同じ原理・効能と思われます。穴を開ける方法は取り返しがつかないので、メガネ法がオススメです。メガネを持っていない方は、100円ショップで伊達メガネを買うか、割り箸をメガネのようにして挟むとよいでしょう。メガネありのサウンドが気に入った場合で、メガネが必要ない方は、穴を空けることを検討するのもよいと思います。
中高音域
中域は量が多いとも言えませんが、やや張り出します。クリアで素晴らしいクオリティであり、ツヤ感も出せます。とにかく、中域の質は良い。
高域は遠慮なく出ます。音源によっては当たり前のように刺さります。スピーカーのような高域です。この広域が、中域の倍音を支えて質を上げているかもしれません。
音場感・定位感
空間表現は定位重視。音場は広くはないものの、狭いとも言えません。普通。
音像はやや前方に定位します。中域のクリアさもあり、定位は明瞭に感じます。
音量・鳴らしやすさ
音量
音量はやや小さい。携帯機器でも大抵の場合は問題にならないと思いますが、爆音は厳しいかもしれません。
iPad直挿しの場合、7割くらいの音量で適正音量(70~80dBくらい)になります。
鳴らしやすさ
鳴らしづらくはない。鳴らしきれない場合は、全体にもやがかかる感じになります。しかし、極端に相性が出やすいということもなく、低音が著しく減ったりはしません。
音について 総評
普通に装着すると低音が多すぎるので、メガネの上から装着するなどの方法で低音を減らすのが良い。そうすれば素晴らしい音が得られます。この価格帯では類を見ないほどと言ってもよい。
特に中域は素晴らしい質です。ボーカルものなどには特に合わせやすい。
装着感
装着感はかなり良い。
イヤーパッド
イヤーパッドはニセモノ感の強い合皮。革っぽく見せようとしている雰囲気がありません。形状は楕円で、クッションはやや硬めの低反発系です。
大きさは外側の長辺が100mm・短辺が80mmで、内側の長辺が80mm・短辺が50mm。深さは後ろ側が30mmで、前側は25mmです。かなり大きいイヤーパッドと言えるでしょう。傾斜バッフルの恩恵もあり、大抵に人は快適な耳周りとなるはずです。
ヘッドバンド
ヘッドバンドのクッションは薄く、柔らかすぎて頼りない。しかし、本体が軽いので頭頂部への負担はほとんどありません。
側圧
側圧は普通。圧迫感は少ないのですが、かといってずり落ちることもない。ちょうどよい側圧です。
装着感 総評
大きいイヤーパッドや傾斜バッフル、本体の軽さによって、疲れない装着感です。本体の軽さは重要で、装着感が良いヘッドホンでも、本体が重い場合は首が疲れてしまいます。
装着感は非常に良いといっても問題ないと思います。
携帯性
可搬性や遮音性についてのレビュー。
持ち運びしやすさ
可搬性は良い。上記のように、折りたたんでポーチに入れれば、書籍のような感覚で持ち運べます。
ただし、破損しやすい箇所があるので、折れ曲がったりしないように注意する必要はあります。
外部遮音・音漏れ防止
外部遮音性はメガネなしの場合、それなりに良い。外部の音をまあまあソフトにしてくれる感じ。
音漏れ防止性能はメガネなしでもあまり高くありません。特に耳障りな帯域が漏れ、シャカシャカする感じ。人が近くにいるところで使うのはやめたほうがよいでしょう。
なお、メガネありの場合はどちらの性能もかなり悪くなります。
総評
デノンらしい色合いだが安っぽい外観に、メガネをするか改造すると非常にバランスの良いサウンドのヘッドホンです。
壊れやすかったり、良い音で聴くには工夫が必要で、クセがあります。
しかし、音自体は素晴らしいものがあります。さらに、装着感も良い。壊れやすいところもありますが、それを考慮してもオススメできる音が出ます。
個人的な好みでは、上位モデルのAH-D1200がよりオススメですが、音のクセの少なさではこのD1100の方が優れているとすら思えます。
本記事の内容は以上です。
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