DALIのコンパクトかつプレミアムなスピーカー、KUPIDのレビューです。
同社ハイエンドのKOREの技術を継承し、”最も小さなKORE”を標榜するスピーカーです(公式サイトより)。
シリーズ化もしない単体ラインナップであり、それゆえの専用設計を売りにしている部分もあります。MENUETのようなプレミアムコンパクト路線の最新型というわけです。
オーディオ機器の新製品情報は常に追っているのですが、久しぶりにビビっと来たので、発売日に買いました。
以前からDALIのスピーカーは気になっており、OBERON 1でも買おうかと画策していたのですが、そこにこのようなものを発売されては、もう買うしかありません。
色は青(チリー・ブルー)にしました。筆者は特別に青が好きなわけではないのですが、なぜかスピーカーは青を買いがちです。
(現在メインスピーカーとして使用しているKEF LS50 Metaも青です。)
- コンパクトサイズでポップなデザイン
- クセのない音
- ダブつきのない低音
- 非常に優れた温度感・色彩感
- 特になし
外観・仕上げ等
外観や仕上げについてのレビューです。
全体

正面。ねじ等が露出しないスッキリしたデザインにまとめられています。KORE以降のRUBIKOREなどよりも、やや古いOPTICON Mk2に非常に近いデザインです。
独特のツイーター周りの放射状の印刷も健在。
しかし、この装飾部分みたいなところのプラ感が強く、決して高級には見えません。そんなに安っぽくもないですが。
四隅は丸くなっています。これによりよりポップな感覚になっているかもしれません。
ドライバー構成は、ソフトドームツイーターにウッドファイバーコーンのウーファーを組み合わせる、いつものDALIです。
ネットはマグネット取付で、杢のような模様です。ネットを付ければなかなか高級感が出ます。
仕上げ
仕上げはプラスチックシート貼りで、ざらざらしたテクスチャ感です。
分厚いものを使っているらしく、表面の硬さで音をチューニングしているのかもしれません。
ブラック・アッシュ(黒)とダーク・ウォルナット(茶)では木目調です。多少の高級感が欲しい場合は黒か茶を選ぶのがよいでしょう。
前述の通り、ドライバー周りの部分はプラスチック感が強い。あからさまにヒケがある、とかではないので、そこまで安っぽくはないですが、塗装したプラスチック以上ではありません。
背面

背面。バスレフポートとターミナルがあります。
背面もねじを露出させないようになっています。メンテナンスはしにくそうです。
バスレフポートはフレア形状です。最近のスピーカーほぼ例外なくそうなっているので、ごく普通と言えるでしょう。
ここにも放射状のデザインがあります。

ターミナル部。枠から金具まで、専用の部品に見えます。
金具の部分は削り出しに見えます。金属感が強く高級感があります。
シリアルナンバーは左右同じで、末尾が”-1″と”-2″でペアになっています。また、組み立てて測定した人の名前らしきものが記入されています。
サイズ感

マジックリンのボトルを横に置くとこんな感じ。パッシブスピーカーとしてはかなり小さい。
奥行きも控えめなので、かなりコンパクトな部類です。
外観 総評
スピーカーとしてはポップ寄りなデザインだと思います。デザインの要素はほかのDALIスピーカーと同じですが、主にねじ類を隠すことによる、徹底した機械っぽさの排除が効いているにように見えます。
今までのDALIはどっしりした家具のようなデザインでしたが、このKUPIDではより手軽に手に取りやすいように、北欧雑貨のようなカラフルかつシンプルな雰囲気にしてきたのかもしれません。
コペンハーゲン・ニューハウンの街並みのような、これぞデンマークという感じのカラーバリエーションもとても良い。もっとビビットな、ゴールデン・イエローを買えばよかったかな…などと思うくらい面白いラインナップです。
音について
使用した機器
トランスポート:Mac Pro (Late 2013)にSparky Linux 7.8をインストールしたもの
(MPD+UpmpdcliにてDLNA経由でQobuz再生)
DDC:Antelope Audio Zen Go Synergy Core
DAC:SMSL D400EX
プリアンプ:ウエスギ U・BROS-1 (出力カップリングコンデンサ交換)
パワーアンプ:Hypex Nilai500DIY デュアルモノラルアンプ(自作)
いろいろな面で疑問が浮かぶ機器あるいは構成だと思いますが、気にしないでください。今後これらの機器のレビューなどもするかもしれません。
概要
音は非常にすごい。クセがほぼないとか温度感がよいなどと言うことはできますが、この値段・小ささでこの音はすごいの一言です。
次の図は、このスピーカーの音を感覚的に示したものです(測定等したわけではありません)。

この図についての詳細はこちら。
詳細
周波数的な特徴
特にピーク感を感じる部分などもなく、高域が強いとか低域が強いなどとは感じません。一般的にはフラット的だと言ってもよいのではないかと思います。
曲によっては、ほんのわずかにピーク感・刺さり感を感じることもありましたが、ほぼ気になりません。
もちろん、筐体が小さいので重低音は出ませんが、低音に一切のダブつきがなくすっきりしているのはとても良い。音量を上げても怪しい感じにはなりません。箱がかなり強くできていると思います。サブウーファーとも組み合わせやすい。
音場感・定位感
ここがすごいです。いわゆる「音離れがよい」という具合で、スピーカーの後ろにたたずむように定位します。襲ってくるような感覚ではなく、当然のようにそこにいるタイプです。
場の感覚も、スピーカーからふた周り以上外まで引っ張ってくれます。しかし、音場感でふわっと鳴らすというよりは、音像重視でバキッと鳴らしてくるタイプです。
奥行き感というか、前後のレイヤー感がかなり良い。左右よりは前後のほうが得意な感覚です。
音の数が多くなると解像しきらない感覚もわずかに出ますが、それにより空間表現が変に収縮したりしません。以外にフトコロが広い。
色彩感・温度感
これもすごいです。やや遠めに定位こそすれ、その温度感や色彩感は微塵も失われません。ものすごい情熱で訴えかけてきます。
ここがこのスピーカーの最も素晴らしいと感じている部分です。最初に聴いた瞬間に開いた口が塞がらないほどでした。そして、その後音楽の楽しさにニヤケ面になるわけです。
このスピーカーの音のセンスがものすごく良いか、もしくは筆者の好みとぴったりマッチしたかのどちらかです。
その他
トランジェント(応答性)の良さを売りにしているようですが、本当に良いと思います。
ハンドクラップやドラムの音など、破裂系の音は特にトランジェントが重要ですが、欲しいタイミングにスパッと出ます。ほかのスピーカーでは遅れているように感じるほどです。
筆者の環境では、スーパースワンと同等かそれ以上にトランジェントに優れているように感じます。フルレンジ一発並みの応答性とは一体なんなのか。
なお、これまで音についてネガな部分をほぼ書いていませんが、現状、本当に悪い部分を感じていません。最初は中高域に刺さり感というかやや雑な部分があると感じていたのですが、こなれてきて(いわゆるエージング)解消した様子です。
他のアンプで比較
「使用した機器」で紹介したシステムは筆者のリファレンスシステムですが、値段が不釣り合いな気もするので、ほかのアンプでも試してみました。
PC~DACまでは変更していませんので、あまり参考になるデータではないかもしれません。
Marantz PM6007
音場がスピーカーの間にコンパクトに収まり、前後のレイヤー感も控えめになります。逆に言えば、このスピーカーはアンプをかなりグレードアップしてもついてくるポテンシャルがあることになります。
このアンプ、マランツらしいややきらびやかな音なのですが、このスピーカーではそれが如実になり、良し悪しだと感じます。中域の良さはそのまま魅力になります。
全体的にコンパクトな鳴り方になってしまうからか、ちょっとガチャガチャした雰囲気も出てきます。
より良いシステムで先に聴いているので当然と言えば当然ですが、ちょっと物足りない。細かい部分はともかく、良い雰囲気であれば、これはこれで良いと思って聴けるのですが、そこまで達していないのかもしれません。
SOULNOTE A-0
このアンプのみ電源ケーブルを付属のものとし、バランス入力しています。
独特の音場感です。内側に絵を貼ったドームの中にいるような感じ。空間の広がりは感じるが、その陰影感までは感じない、みたいな。
このアンプでは全体的に「雑な感じ」がします。もちろん、音のチューニングが悪いわけではなく、音の縛りがなさすぎるというか、野放図と言ってもよいかもしれません。まあ、代表者がそのような方向性を公言しているので、それが合うかどうか、という話なのかもしれませんが。
また、低音は特に出にくい。このスピーカーとの相性はあまり芳しくなさそうです。
Denon PMA-A110
ものすごい空間表現です。本当にコンパクトなスピーカーなのかと疑うほど。
このアンプの実は骨格がゴツい感じがよく出ます。低音はよい具合に増えますが、高域がちょっとかためです。
このあたりから値段が不釣り合いになってきますが、スピーカーが負けている感じは全くありません。
他のアンプを使用した総評
スピーカーのポテンシャルが高すぎるかもしれません。
もしくは、能率が低いため単純に鳴らしにくい可能性もあります。
音について 総評
価格を考えれば、非常識なほど音が良いスピーカーです。ポップな見た目に騙されてはいけません。超Hi-Fi向けなスピーカーです。
本当に手放しでオススメできる音です。これさえ導入すれば、スピーカーに悩むことはしばらくないはずです。あとはアンプやDACなどをアップグレードしていけば、いつまでもついてきます。
ユニット・ネットワークなど
いつもならば分解して、ユニットやネットワークの詳細を書いているのですが、今回は不要なようです。なぜならば、PHILE WEBに掲載された発売直前の記事(https://www.phileweb.com/news/audio/202509/24/26880.html)がきわめて詳細に解説しているからです。興味がある方はそちらを読んでください。
個人的には、ネットワーク基板の写真が面白いような気がします。
素子の数で見れば、ウーファー側が-6dB/octで位相補正(もしくはカットオフ付近のピーク感調整)付き、ツイーター側は12dB/octな感じがします。セメント抵抗が多く、各素子の効きを微調整しているようにも見えます。
一応ユニットのアップ写真を撮ったので載せておきます。

DALIお得意のウッドファイバーコーンウーファーです。かなり細かく砕いた木材を使っているのか、MDFみたいな質感です。

ツイーター。DALIらしいちょっと茶色みがかったソフトドームです。
また、エンクロージャーは非常に強固です。叩くとカツカツという高い音がします。安いスピーカーにありがちなポコポコした感じは全くありません。
総評
外観と音のギャップがすごいスピーカーです。
音は文句なし、筐体は小さく、ポップでスリムなデザインで、全方位スキがない。デザインがいけ好かないと感じる方以外は、すべての方にオススメできます。
良い音のスピーカーが欲しいけれども、本格的すぎるのはインテリア的にも邪魔だし…という方も安心して買えます。ネットを装着すれば、なおのこと目立たなくなります。
とにかく、非常にオススメのスピーカーです。迷ったら買いましょう。
(褒めすぎてステマくさいですが、完全に自腹購入です。それほど気に入ったということです。)
本記事の内容は以上です。
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