アンプ・DACヘッドホンアンプ

FX-AUDIO- PH-A1Jのレビュー:超パワフルサウンド。

FX-AUDIO- PH-A1Jの第2ロットのレビューです。

同ブランドの単体ヘッドホンアンプの第1段モデル。ディスクリートの純A級パワー段と、それによる公称1,200mWの大出力が特徴です。

圧倒的なパワー感がある超パワフルサウンドです。わりとマニア向けかもしれません。

外観・仕上げ等

外観についてのレビューです。

全体

全体

相変わらずのアルミケースで、中華っぽい外観です。

仕上げ

ヘアラインに黒アルマイト仕上げです。いつものことながらヘアラインが粗めで、大雑把な印象を受けます。これなら粗いサンドブラストの方がよほど高級感があると思います。

前面

前面

前面。電源スイッチ、出力端子およびボリュームツマミがあります。

スイッチ類は昔ながらのトグルスイッチで、カチャカチャと心地よい操作性です。やはりオーディオ機器にはクラシカルなスイッチが似合います。

出力端子はごく普通に標準ジャックで、ボリュームツマミもよく見る形をしています。

トグルスイッチ以外は、あまり面白みがありません。

相変わらずやたら眩しいLEDがついています。光るのが電源だけなのがまだマシでしょうか。

後面

後面

後面。信号と電源の入力端子があります。

入力はステレオミニとRCAに対応。RCAの方がよく使われると思いますが、なぜかステレオミニが1番に割り振られています。これは最近の改良で反対になり、RCAが1番になったようです。

電源はごく普通に12Vのセンタープラスです。

RCAジャックにはシャーシに固定するネジがついていないので、はめ込みがきついRCAケーブルを頻繁に挿抜すると、ジャックが壊れる場合があります(筆者の個体がそうなりました)。普通はジャックとシャーシがネジで固定されているので基板側に力はかかりませんが、このA1Jのようにネジがないと、挿抜時の力がそのまま基板やジャックの足にかかります。そしてジャックの足が折れます。これは構造上の欠陥と言ってもよいかもしれません。

外観 総評

いつものFX-AUDIO-の外観です。中華っぽいと言ってもよい。しかし最近の中華オーディオは外観の高級感があるものも多いので、ひと昔前の中華感と言った方が正確でしょう。

トグルスイッチは非常に良い。オーディオ機器に必要なのはしっかりした操作感だと思います。マイコン制御が主流になってきた90年代以降は忘れ去られた考え方ですがね。

音について

音についてのレビューです。

詳細

音は非常にパワフルで濃厚な感じ。ややドンシャリかもしれません。

特筆すべきはその低音です。とにかくものすごいパワーのある低音で、ヘッドホンによっては殴られたかのような衝撃すら出せる駆動力があります。超絶的と言っても問題ないでしょう。
その駆動力たるや、鳴らしきれていないと低音がスカスカになるAKG K700シリーズでも片手間で鳴らしているような感覚があります。
低音はやや多めですが、露骨に多いわけではありません。少なくとも、低音が意図的に盛られているとは感じないと思います。

中高域はあっさりというほどあっさりではありませんが、そこまで芳醇な感じでもありません。低音が非常に特徴的なので、それに引っ張られて相対的にあっさりに感じるということはありそうですが。

高域はやや多めで、少し刺さる感覚があります。顕著ではありませんが、刺さり気味のヘッドホンとは合わせづらいかもしれません。

圧倒的な駆動力を活かし、低能率ヘッドホンと組み合わせるのももちろん良いのですが、能率の割に鳴らしづらい50mm以上のドライバーを搭載したヘッドホンと組み合わせるのもまた面白いと思います。

その他

イヤホンや高能率ヘッドホンとの相性はあまり良くありません。

まず、ホワイトノイズがあります。大抵のヘッドホンではそこまで気にならないでしょうが、イヤホンではまともに使えないくらいの音量になります。
このノイズは超低ノイズ電源でも抑えられないので、このアンプ自身から出ているもののようです。

次に、このアンプのゲインが高いという問題もあります。ゲインが高いということは、ボリュームを少し回しただけで大きく音量が上がるということです。これのせいで、イヤホンはもちろん、低能率ヘッドホン以外では使いにくいアンプとなってしまっています。どんなヘッドホンでも、ボリュームを9時か10時の位置まで回せば、うるさすぎるくらいになります。
特に問題になるのはギャングエラーです。このA1Jではゲインが高すぎて、ギャングエラーを感じる領域でも十分な音量になることがあります。
ここまでの内容は、通常のライン出力を入力した場合のものです。DACなどの上流で音量を下げられるのならば、そのようにした方が使いやすくなります。出力の大きさを変えられないDACなどでは、ここに記したゲインが高すぎる問題が浮き彫りになります。

基本的には低能率ヘッドホンと組み合わせることが推奨されます。能率の低いAKGや平面駆動型などは一切のホワイトノイズを感じず快適に利用できますが、能率の高いオーディオテクニカやGRADOはあまり合いません。

音について まとめ

超パワフルなサウンドです。これに尽きる。どんなヘッドホンもハートフルに鳴らすので、コレさえあれば他にはいらない、というタイプではありません。そういう意味では玄人向けです。

同じくFX-AUDIO-のPH-A2Jが無難であるのに対し、こちらは癖があるということで、うまく棲み分けができています。同ブランドの据え置き単体ヘッドホンアンプは、これ以上ラインナップが増えないかもしれませんね。

機能性・操作性

機能性や操作性についてのレビューです。

機能性

機能は電源と入力切替、およびボリュームのみで、最小限です。不要なミュート機能があったりはしません。

操作性

見たままの操作のため、操作性は抜群です。しかも前述の通り、トグルスイッチのいかにもアナログな操作感が心地よい。

分解

分解した中身を紹介。

メイン基板

メイン基板

やたら部品がカラフルです。スイッチが青かったりボリュームが緑であることはありがちですが、それに加えて入力カップリングコンデンサが赤、リレーがオレンジで、挙句の果てにはパワートランジスタのヒートシンクが紫です。さらに電解コンデンサにニチコンのFine GoldやMuse ESシリーズなど使えば、さらに派手にできるでしょう。中身がカラフルでもたいした意味はありませんが。

オペアンプで電圧増幅、ディスクリート段で電流増幅しているベーシックな構成に見えます。昔からあるアンプの差動増幅段をオペアンプに置き換えたような感じです。

オペアンプはいつも通りTIのNE5532です。2回路入りのはずですが、なぜか片チャンネルに1個ずつ使っています。ソケットに嵌まっているので簡単に交換できます。

メイン基板 裏

裏面

裏面。はんだ付けの品質が良くありません。あまりにひどいものは筆者が修正しました。

入力のRCAジャックは、前述の通り足が折れて破損したので修理しています。ジャックは足がはんだ付けしてあるだけで、その他の固定はされていませんでしたので、基板を貫通しているプラ部分を溶かして固定しておきました。

全体的に、あまり品質が良い感じはしません。全体に占める人件費の割合が抑えられているのかもしれません。

その他

PH-A2Jと大きさの比較

PH-A2Jと並べた写真がこちらです。

A2JとA1J

A2Jの方横幅、厚み共に大きい。より高価なモデルなので、筐体を大きくしないと箔が付かないということでしょうか。

奥行きを比較したものがこちら。

奥行きの比較

奥行きはA1Jの方が長い。こう見ると、A1Jの細長さがよくわかります。

ちなみに、この2つは中華製の単体DACと奇妙なまでに寸法が合い、重ねて置きたくなるものがあります。A1JはSMSL Sanskrit 10thと、A2JはTopping E30とベストマッチです。業界標準のサイズなるものがあるのでしょうか。

総評

中華っぽい見た目で超パワフルなサウンドを奏でるヘッドホンアンプです。アナログな操作感も良い。

無難な音ではありませんが、ハマれば虜になるような音です。これを魅力的な音と言わずして何と言うのか。

ホワイトノイズやゲインの関係など、使いこなしにやや癖がある部分もありますが、音が魅力的なことには代えられません。積極的に人にオススメできるかは微妙ですが、音という一点においては突き抜けていると言ってもよいと思います。個人的にはヘッドホンアンプで最も気に入っているかもしれません。

純A級ディスクリートパワー段などのスペックからして、マニア向けでしょう。使いこなせる自信がない場合や、無難なものが欲しい場合は買ってはいけません。マニアならば、値段が安いこともあり、コレクションに加えて損はないと思います。

本記事の内容は以上です。

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