FX-AUDIO- PH-A2Jの第1ロットのレビューです。
FX-AUDIO-の真空管式でない据え置きヘッドホンアンプの第2弾で、比較的高級なモデルです。Texas Instruments TPA6120という、比較的安価なものから高級モデルまで採用されているヘッドホンアンプICを使った、オーソドックスなヘッドホンアンプです。
よくまとまった音のアンプですが、マニア向けではないかもしれません。
外観・仕上げ等
外観についてのレビューです。
全体
特に感想も出てこない中華アンプ式の外装です。ケースは全てアルミ製。
仕上げ
仕上げはいつも通りヘアライン仕上げの黒アルマイト。毎度のことながら、ヘアラインが荒く、繊細さに欠けます。スピーカー用のプリメインアンプなどであればこれくらいの密度でよいでしょうが、小さいヘッドホンアンプでは荒いように感じてしまいます。
ツマミは削り出したような質感ですが、それゆえに滑りやすい。側面には加工痕を意図的に残すような処理をしてありますが、それが荒く、大げさに言うとネジのような感じになっています。
前面
前面。操作部と出力端子があります。
左のボタンは電源・ミュートです。長押しで電源、短押しでミュート。ヘッドホンアンプでミュート機能が必要かどうかは微妙です。スピーカー用のアンプなら便利な機能ですが…
右のボタンはゲイン設定・入力切替。長押しでゲイン設定、短押しで入力切替です。このアンプはゲインが低いので(後述)、ゲイン切替はあまり使えません。
ボタンは内部のタクトスイッチを押すタイプです。つまりプチプチ言うタイプ。マイコン制御なのでこのようなことができます。
ボリュームツマミは真ん中にあります。ヘッドホン出力はその右にあるので、プラグ部の大きいヘッドホンを挿している場合、右手で操作しにくくなります。
これもいつものことですが、各LEDが非常に眩しい。あまりに眩しいので、内部に白色のプラ板を切ったものを入れています。それでもまだ眩しいですが。
後面
後面。信号入力と電源入力があります。
信号入力はRCAとステレオミニに対応。ステレオミニ入力があるアンプは割と多い印象ですが、あまり使わない気がします。このような単体アンプを買うということはDACを持っている場合が多いでしょうから、DACの出力のRCAからアンプに入力することが一般的でしょう。
電源はごく普通に12Vで、センタープラスです。内部のコンデンサ容量が多いのか、DCプラグを挿すときに火花が出ることがあります。
外観 総評
中華アンプ方式の外観です。インジケータが眩しすぎることなどは、もはや様式美とすら言えると思っています。日本の会社がプロデュースしているので中華と言い切れない部分もありますが、製造が中国なので中華と言っても問題ないでしょう。
やはり、昔からある日本メーカーのアンプなどと比べると、雅な雰囲気が足りないのです。
音について
音についてのレビューです。
詳細
全体的にはややカマボコ系で、ウォームぎみの音です。低音と高音がやや控えめに感じ、あまりパンチが効いているような雰囲気ではありません。主張が強くなく、個性があまり感じられない音です。
全体の雰囲気を大事にするような感覚です。埋もれている音をほじくり出すような感じではないので、キレのようなものは感じづらい。
良くも悪くも「普通」という感じの音だと筆者は思います。まとまった音なのは良いことですが、まとまりすぎて面白みがありません。もちろん、普通の音を作るのは難しいので、これは評価すべき点ではあると思いますが、マニアには物足りないと感じています。アンプをたくさん持っている場合、これを選びたくなる絶対的な魅力に乏しいのです。反対に、それなりのヘッドホンアンプをひとつ持っておきたいというのであれば、有力な選択肢になると思います。
据え置きなりの駆動力はあります。これを持っておけば、大抵のヘッドホンを十分に鳴らしきることができるでしょう。ただし、ゲイン(入力に対する出力の増幅率)が小さく、一般的なヘッドホンアンプと比べてかなりボリュームを回さないと同じ音量になりません。さすがに必要な音量がとれないということはないと思いますが。
ゲインについては、第2ロットで解決した可能性があります。ここでレビューしているのは第1ロットです。最新版は第3ロットですが、ゲイン設定は第2ロットと変わっていないはずです。
その他
無音時のノイズがあります。それもホワイトノイズのような感じではなく、ブーンという低周波ノイズです。低ノイズ電源を使ってもノイズが消えないので、アンプ側から発生していることに間違いはありません。
ヘッドホンだとそこまで気にならない音量ですが、イヤホンでは気になるかもしれません。筆者はあまりイヤホンを使わないので検証はしていませんが。
このノイズについても、 第2ロットで解決した可能性があります。
音について まとめ
良くも悪くも普通、あるいは無難な音と言ってもよいかもしれません。少し美化した言い方だと、まとまった音でしょうか。
前述のように、それなりのヘッドホンアンプをひとつ持っておきたいというのであればオススメできますが、マニア向けではないように感じます。
これひとつ持っていればよい、という音ではあると思います。
機能性・操作性
機能性や操作性についてのレビュー。
機能性
ミュートやゲイン切替があるのでやや多機能ですが、使う機会がほとんどありません。結果的に機能性は普通です。
操作性
操作性は悪くはありません。ボタンを押すかボリュームを回す操作しかありません。
ただし、前述のように、プラグ部が大きいヘッドホンを挿していると、ややボリュームが右手で回しづらくなります。ボリュームが滑りやすいという地味な問題もあります。
また、ボタンを押したときのプチプチ音が大きく、あまり上品ではありません。本体の中身ががらんどうなので、響いているのかもしれません。
総合的に操作性は悪くありませんが、詰めが甘い感じはあります。
分解
分解した中身を紹介。
メイン基板
メイン基板。表面実装部品を多用している割には、実装密度が極端に低い。表面実装部品も比較的簡単に交換できそうです。
回路構成はごく普通で、オペアンプにて電圧増幅を行い、パワー段にヘッドホンアンプICを据えているようです。オペアンプはBurr-Brown OPA2604、アンプICはTexas Instruments TPA6120です。
最新の第3ロットでオペアンプが変わり、LM4562になったようですので、現在新品で購入できるものは音が大きく違う可能性もあります。
電源ICは問題のXLSEMI製です。FX-AUDIO-製品によく使われていますが、正直、あまりよい電源とは思えません。
基本機能が全てIC頼みなので、面白みがありません。
メイン基板 裏
基板裏。FX-AUDIO-にしてはかなり丁寧なはんだ付けです。
その他
フロントパネル基板とメイン基板の接続はフレキシブルケーブルです。ちょっと現代的。
その他
PH-A1Jと大きさの比較
PH-A1Jと並べた写真がこちらです。
A2Jの方横幅、厚み共に大きい。より高価なモデルなので、筐体を大きくしないと箔が付かないということでしょうか。
奥行きを比較したものがこちら。
奥行きはA1Jの方が長い。こう見ると、A1Jの細長さがよくわかります。
ちなみに、この2つは中華製の単体DACと奇妙なまでに寸法が合い、重ねて置きたくなるものがあります。A1JはSMSL Sanskrit 10thと、A2JはTopping E30とベストマッチです。業界標準のサイズなるものがあるのでしょうか。
総評
特に尖っている外観でもなく、刺激的な音でもない、無難なヘッドホンアンプです。よくまとまっていると言ってもよい。
据え置きのヘッドホンアンプをひとつ持っておきたいというのであれば、好適でしょう。駆動力も十分なので、これひとつで大抵のヘッドホンをまともに鳴らせます。一般的に鳴らしづらいとされるAKG K701などと組み合わせても、特に不満はありません。
本記事の内容は以上です。
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