Topping NX1sのレビューです。
Toppingの最廉価ポータブルアンプ。完全アナログ式で、DAC等は付いていません。このようなタイプはあまり見なくなりましたが、それはスマートフォン等にイヤホンジャックが付かなくなってきているからかもしれません。
かんたんレビュー
※ 本記事公開時点でTopping公式サイトからこのアンプのページが消えているので、生産終了している可能性がありますが、まだ在庫品が販売されているようです。
外観・仕上げ等
外観や仕上げのついてのレビューです。
全体
全体の表側。特に面白みはありませんが、このアンプの名前よりもブランド名の方が圧倒的に小さく書いてあるのがやや気になるところ。ハイレゾ対応のシールもあります。
ボリュームや入出力端子がある面は出っ張りが設けられており、カバンの中などで不意にボリュームが回らないように配慮されているように見えます。
裏面。RoHS対応などの表記が印字してあります。
仕上げ
外装の材質は全体的にアルミで、触るとひんやりします。仕上げはアルマイトで、少し粗めのサンドブラストが施されています。
前面
前面。入出力とボリュームがあります。
入出力はどちらもステレオミニです。あまり便利ではありませんが、本体の大きさを考えるとこれしか選択肢がなかったのでしょう。
ボリュームはもちろんアルミで、側面にはローレット加工がなされています。小さいツマミながら、滑ってスカイにくいということは全くありません。
出力と入力の間にある小さな穴は電源インジケーターです。電源ONで青に、バッテリー残量が少なくなると赤に点灯します。
後面
後面。充電端子やBass、Gainスイッチがあります。
充電端子はマイクロBです。今ではType-Cに代替されたので、あまり見かけなくなりました。その右の小さい穴は充電インジケーターで、充電中は赤に点灯します。
スイッチ類はやや奥まった位置に付いており、スイッチの操作部も非常に小さい。操作がしやすくはありませんが、誤作動防止の観点からは評価できます。
外観 総評
シンプルな外観で、アルミのひんやり感が冴えます。
ボリュームやスイッチの誤作動防止の配慮はよいと思います。
付属品
付属品は次の6点です。説明書に付属品の使い方は記載されていないので、ユーザーが使い方を考える必要があります。
- ゴムバンド(2本)
- 面ファスナー
- ゴムパッド
- USB Type-C – Micro Bケーブル
- ステレオミニケーブル
- USB A – Micro Bケーブル
ゴムバンド(2本)
DACやDAP、スマートフォンなどの上流機器とアンプをまとめるためのゴムバンド。
メーカーロゴのエンボス加工入りで豪華な感じもありますが、余計な凹凸を設けると応力集中によって裂けたりしやすいのではないかとも思います。
面ファスナー
アンプと上流の機器をまとめるための面ファスナーと思われます。取り付けたい機器の双方に貼り付けて使うはずです。
その程度の保持力ではすぐに外れてしまうのではないかとか、ノリがそのうちデロデロになって大変なことになるのではないか、という懸念事項があります。そもそも面ファスナーの寿命が短いという致命的な問題もあります。これは使わないほうがよいと思います。
ゴムパッド
ゴムのシート状の物体です。アンプとその他の機器をゴムバンドなどでまとめて使う際、互いに傷がつかないように、それらの間にこれを挟みます。
USB Type-C – Micro Bケーブル
Type-C出力の現代的な充電器でこのアンプを充電できるケーブルです。
このケーブルで通信できるかどうかは確認していません。
ステレオミニケーブル
アンプの入力用のケーブルです。コネクタ部のハウジングがアルミ製で高級感があります。
アナログケーブルはこれしか付属しないので、RCA出力のDACなどから入力する場合は、変換ケーブルか変換コネクタを自分で用意する必要があります。
USB A – Micro Bケーブル
USB Aポートから充電できるごく普通のケーブルです。
やはり、こちらも通信できるかは確かめていません。
音について
音についてのレビューです。
詳細
全体的にはややカマボコ感があり、特に特徴のない音です。
内部がオペアンプのみで構成されているので(後述)、特徴がない感じになるのでしょう。もちろん悪くはないのですが、特別に良いという魅力は感じにくい。
しかし、オペアンプのみの低歪が良い方向に作用しているのか、中高域は非常にクリアであり、濁りや歪み感を全く感じません。これは評価に値します。
駆動力はやや不満があり、重厚感のようなものはほとんどありません。低音がボワ付きやすいとも言えます。
音場は狭く、耳にピッタリ貼り付いてくるような感覚です。定位はやや平面的。空間表現に優れているとは言いにくい。
iPadのヘッドホンジャックから直接このアンプに入力すると、一皮むけてクリアになります。少なくとも、そのような機器に組み込まれているアンプ部よりは高性能なようです。
補足:このような使い方の場合、内蔵アンプの負荷が軽くなる(ほぼ完全に抵抗性の負荷になる、インピーダンスが上がるなど)ことによって歪率などが向上し、音が良くなる効果を見込める場合があります。その代わり、出力されるノイズは加算されていきます。もちろん、外部DACを接続したうえでヘッドホンアンプを接続するのが根本的に改善されるので最良ではあります。
その他
このアンプからはノイズが全くありません。高感度なイヤホンを使っても完全に無音です(筆者所持のものでしか検証していないので、保証はできませんが)。
音について まとめ
ややカマボコ型で特徴がないが、中高域のクリアさ・低歪み感は良い。その半面、重厚感は出にくいアンプです。
筆者が使用したときはヘッドホンを接続しましたが、そのローノイズを活かしてイヤホン用に使うならアリではないかと思います。ヘッドホン用ならば、中高域に特化したようなものなら合うかもしれません。
機能性・操作性
機能性や操作性についてのレビューです。
機能性
低音増強機能とゲイン切り替え機能があります。
Bassスイッチでバスブーストのオンオフが切り替えられます。オンにすると低域が4.5dB程度持ち上がります。過度にブーストされて下品になるものではありません。ほどよく持ち上がります。
Gainスイッチではその名の通りゲインを切り替えられます。低ゲイン側にすると電圧ゲインが0dB(1倍)になるので、音量が大きくなりません(この場合でも諸々の理由により意味がないとは言えず、出音が向上する可能性はあります)。基本的にはハイゲイン側で使うのがよいでしょう。
操作性
本体が小さいのでツマミやスイッチのノブもやはり小さく、操作性が良いとは言えませんが、悪いとも言えません。そもそも機能が少ないので…
その他
分解
分解すると、まずはこのようになっています。
この黒いものは絶縁用でしょう。両面テープのようなものが全体に貼ってあり、それで貼り付いています。これを剥がすと、次のようになります。
主に部品が実装されている面です。下側についている大きめのIC2個がオペアンプで、これがアンプの機能のほぼ全てを担っています。
これの裏側はこのようになっています。
比較的大型の部品が実装されています。
ボリュームは白黒で特別感がありますが、そこらへんの中華メーカーのものではなく、東京コスモス電機製だったと記憶しています。
ボリュームの右のものは入力カップリングコンデンサです。豪華にもフィルムコンデンサが使われています。
ほとんどの面積をバッテリーが占めています。わりと容量があるのか、いくら使ってもなかなかバッテリーが減りません。
内部の構成
分解したときに、おおよその回路図を起こしてみました。
アンプ部はオペアンプを2個直結した形になっています。入力側はTIのOPA1652で、SoundPlusなるシリーズですのでオーディオ用のようです。J-FET入力のため入力カップリングコンデンサを小さくでき、実際、1uFのフィルムコンデンサが使われています。
出力側はNSのLMH6655で、ハイパワーな低電圧オペアンプです。±5V電源の場合、最低でも3Vまでスイングでき、80mAもの電流を出力できるらしい。それをボルテージフォロアで使用し、出力電流を補っているようです。
フィードバックは出力からオーバーオールでかかっています。この帰還の仕方を変更して、ゲイン設定や低音ブーストをしています。
電源は細かくは見ていませんが、おおむね図のような感じではないかと思います。バッテリーから昇圧し、それからレールスプリッタで仮想GNDを作り、両電源化しているという予想です。プラス側とマイナス側で電圧が異なりますが、その理由はわかりません。
総評
アルミのカッチリした外装で、ややカマボコかつ中高域は素晴らしい音のポータブルアンプです。
ローノイズであることやゲインを0dBにできることから、高品質なアッテネーターとして使うことも考えられます。例えばFX-AUDIO- PH-A1Jのようなゲインが高すぎるアンプの前段に接続し、このアンプのボリュームを絞っておくことによって、入力信号の電圧を減衰させておくことができます。こうすれば信号のインピーダンスが下がるので、ノイズに強くなる効果も期待できます。ただし、バッテリー式なので管理が面倒という問題はあります。
本記事の内容は以上です。
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