ヘッドホン

AKG K701のレビュー:ヘッドホン界の至宝と言ってもよい。

AKG K701のレビューです。

K700シリーズの元祖モデルですが、今なお販売が継続されています(日本ではかつて正規輸入品を取り扱っていない時期もありましたが)。それだけ根強い人気があるモデルです。

実際、筆者は多くのヘッドホンを所持していますが、このK701ほど魅力的なヘッドホンは他に存在しません。そう断言できるほど素晴らしいヘッドホンです。

外観・仕上げ等

全体

全体図

光沢仕上げの白に、銀色のメッキ部品がワンポイントのデザイン。ケーブルなどはグレーです。
ヘッドホンでは珍しい、キレイ系の外観です。これがオーストリアの美意識なのでしょうか。

イヤーパッドはベロア調の表面です。中身のスポンジは高反発で硬め。

側面

側面から

側面。光沢仕上げが映えます。そして、この外観にふさわしい音を奏でてくれます。

この頃から現在に至るまで、このデザインは全く変わっていません。

上面

上面から

ヘッドバンド。ここだけ焦げ茶色をしており、非常にキマっています。
幅が広いせいで曲げ強度が高く、柔らかくはありません。

伸縮機構は相変わらずです。ヘアゴムのようなものでテンションがかかり、装着するときに自動で大きさが調整されるようになっています。ヘッドホンスタンドなどに掛ける場合は、ヘッドバンドに負担がかからないようにしましょう。さもなくば、このゴムがビロビロにへたります。ヨドバシなどの展示機でその様子が見られます。

このK701は、K712やK612より伸縮機構のゴムがゆるめにできている感じがします。個体差では説明できないほどあからさまにテンションが違います。

バッフル面

イヤーパッドを外したところ
スポンジも外したところ

イヤーパッドを外すとこうなっています。イヤーパッドは反時計回りに回転させて外します。

開口部を一部ふさぐようにスポンジが取付けられます。主に低音のコントロール用でしょう。
このスポンジ、なぜか取り付けガイドらしき突起よりひと回り小さくできています。

ドライバーはいつものAKG式のやや緑がかった乳白色のものです。これがオリジナルと考えると、感慨深いものがあります。見た目は今も全く変わらないのですが。

外観 総評

光沢仕上げで、白をベースに銀やグレーを散りばめたデザインは、非常にキレイです。使うだけでなく、見て楽しめます。白なので指紋も目立ちにくい。

やはり元祖のモデルなので、この色と形がピッタリと合っている感じがします。その後のモデルで色(と仕様)が違うものが出ていますが、あっさりしすぎているというか、味気なく感じます。

付属品など

付属品は次の3つです。ケーブルは本体に直付けですが、ここに含めておきます。

  • ケーブル(本体に直付け)
  • 標準プラグ-ステレオミニ変換アダプタ
  • 専用スタンド

順に説明します。

ケーブル

ケーブルと変換アダプタ

本体に取り付けられているケーブル。3m程度の長さです。

質感はしなやかですが、4芯なのでやや太い。
プラグを切り落とし、4ピンのXLRプラグを取り付けるだけでバランス接続できるようなります。筆者はバランス接続に興味がないので、そのようなことはしません。

プラグは標準タイプ。少々古めかしいような気もします。大抵のヘッドホンアンプは標準ジャックが付いているので、これに不満を持ったことはありません。

標準プラグ-ステレオミニ変換アダプタ

標準のTRSフォーンプラグをステレオミニプラグに変換するアダプタ。
金色でゴージャスに見えますが、あまり良い作りではありません。

これを使ってステレオミニの機器につなぐと、取っ手の部分が長くなりすぎて不格好になります。

専用スタンド

付属スタンド

専用のスタンド。本体のデザインが良いので、非常に映えるアイテムです。

とはいえ、オマケのものなので、かなり安っぽい作りです。

惜しむらくは、作りが雑なこと。このスタンドは、プラスチックの枠にスポンジのようなものがはめ込まれて接着されているのですが、なにやらズレて接着されてしまっています。パット見ではわかりにくいのでそこまで問題にはなりませんが、どうも気になってしまいます。

音について

概要

音は超美音ヘッドホン界の至宝と言っても過言ではないでしょう。絶品と言ってもよい。とにかく、これにしかない魅力が全開です。

詳細は次の図と以下の説明から。
図の左側の周波数特性らしきものは聴感上のものであって、測定したわけではありません。

AKG K701の音の傾向

この図の詳細は次の記事から。

Plastic Audio式の図の説明
本サイトにおける、スピーカーやヘッドホンの音の傾向を可視化した図の説明です。

周波数的な特徴

低音域

低音域は、やや少ないと感じる人が大半だと思います。控えめですが、最低限はあるので、慣れれば不満には思わない程度です。

反対に、この控えめな低音が美音感、あるいは絶品感を底上げしている雰囲気もあります。

著しく低音が少ない場合はアンプのパワーが足りていないので、アンプの購入を検討しましょう。

低音ドゥンドゥン派の人には向かないヘッドホンです。言わずもがなですが。

中高音域

ここが最大の特徴でしょう。中高域は非常にきれいな雰囲気です。刺さり感が絶妙で、少しだけ刺さりつつ痛いところはうまく回避してくれる、というような感じです。これが圧倒的なシズル感に貢献していることに間違いはないでしょう。

とにかくすばらしい中高域です。ぜひ一度は聴いていただきたい。

音場感・定位感

音場は広めで、ヘッドホンより少しだけ外側に広がる感覚があります。後述のイヤーパッドの関係か、K712より少し広く感じます。

定位はやや前に出る。これもイヤーパッドの関係でしょう。

音量・鳴らしやすさ

音量

音量は小さい。
どれくらい小さいのかを文章で表現できませんが、大抵のヘッドホンよりはかなり小さいと言えます。

大抵の機器では直挿しでも十分な音量がとれますが(鳴らしきれているかは別として)、携帯ゲーム機などの出力がしょぼすぎる機器では最大音量でも不満な場合があります。

変換プラグを使ってまでポータブルデバイスに接続するのもアホらしいので、おとなしく音楽鑑賞専用機にしましょう。もちろん据え置きアンプを使って。

鳴らしやすさ

鳴らしにくい。それなりに上流を選びます。
鳴らしきれていない場合、低音がスカスカになります。

スマートフォンなどに直挿しではまず鳴らしきれません。ポータブルオーディオ機器でもあまりよくない。据え置きでもDACに付属のヘッドホンアンプでは大抵ダメです。
つまり、据え置きの単体ヘッドホンアンプが必須に近い

当サイトでレビューした据え置き単体ヘッドホンアンプの一覧はこちら。

据え置き単体ヘッドホンアンプ
「据え置き単体ヘッドホンアンプ」の記事一覧です。

据え置きの単体ヘッドホンアンプでも、中高域がガサツなものは合いません。
Chord Mojoをそのままヘッドホンアンプとして使うのはアリです。駆動力は少し物足りませんが、K701の中高域が存分に味わえる組み合わせです。両方持っているならお試しあれ。

Mojoのレビューはこちら。

Chord Mojoのレビュー:シルキーかつ高解像度サウンド。
Chord Mojoのレビューです。ポータブル機器とは思えない驚きのサウンドですが、外観を筆頭にクセの強い部分があるヘッドホンアンプ/DACです。万人向けではありません。

音について 総評

すごくきれいな音です。シリーズ1作目なので、それらしい尖った魅力があります。しかし尖りすぎているわけでもなく、基本的にフラット系を維持しています。その塩梅が絶妙で、素晴らしい音となっているのでしょう。
ハマってしまえば、冗談抜きにこれが世界最高のヘッドホンになり得るでしょう。

特に高音域を重視している方には非常にオススメです。今K701以外のAKGヘッドホンを使っていて、AKG式の音が気に入ったというのであれば、ぜひこのK701を試してみてください。AKGの真骨頂とも言えるサウンドが味わえます。

装着感

装着感は普通からやや良いという程度。

イヤーパッド

イヤーパッドは見ての通り真円形です。内部のスポンジは高反発で、硬く感じます。表面はベロア調です。

次の写真の通り、厚みが場所によって異なります。それすなわち、取り付けの向きが決まっているということでもあります。AKGでは珍しい特徴です。
なお、薄い方が前側、厚い方が後側になるようにするのが正しいようです。これによりバッフルが傾斜しているのと同等になり、それらしい音場と定位となるのでしょう。

イヤーパッド 横から

外側の直径は115mm、内側の直径は60mmです。深さは浅いところで20mm、深いところは25mmあります。
かなりイヤーパッドが大きいといえるでしょう。耳が大きい人でも接触することなく装着できると思います。

ヘッドバンド

ヘッドバンドは硬めで、頭頂部への攻撃力がそれなりにあります。
どうしても違和感もしくは痛みがあるならば、スポンジのようなものを貼るのも手です。

昔のコブ付きだった頃はもっとひどかったという話も聞きますが、真偽は定かではありません。

側圧

側圧は弱めから適正くらい。強いと感じる人は非常に少ないでしょう。
ヘッドバンドの位置がゴムひもによって自動で決まるため、常に上に引っ張られるような力が作用していますが、その力に影響されるような感じはありません。絶妙なバランスと言っていいでしょう。

装着感 総評

装着感はそこまで悪くはありませんが、決して良くはないという感じです。

イヤーパッドが硬めなのも気になりますが、一番の問題点はヘッドバンドです。時間とともに、少しずつですが着実に頭頂部へ攻撃をしかけてきます。このあたりはどうにかならなかったものか。

側圧が弱めなのがまだマシなところです。

携帯性

携帯性は皆無です。大抵のヘッドホンの中では、トップクラスに携帯しづらいと言っても過言ではありません。携帯したとして、外でこのヘッドホンを使うのはかなり勇気が要ります。白くて目立つので。

持ち運びしやすさ

皆無。本体が大きいことに加えて、折りたたみなどは一切できません。
乱暴に扱うと壊れそうな構造も、持ち運びのしづらさの一助になっています。

外部遮音・音漏れ防止

外部遮音・音漏れ防止の両性能共に、皆無と言っていいでしょう。開放型なので当然ですが。
しかし、グラドよりはやや音漏れが少ない気がします。グラドを100とすると、K712では98くらいの違いです。

その他

故障しやすさ

このK701も、K712などと同様の構造のため、故障が懸念されます。しかし、今のところ筆者の所持する個体に問題はありません。K712とK612は故障したのですが。

修理に関してはこちらの記事をご覧ください。

AKG K712 PROの分解・修理 (K612やK701にも対応)
AKG K712 PROのハウジング内の断線修理について解説しています。K700シリーズやK612でも同様の手順で修理できます。はんだごてが必要です。

総評

小綺麗な見た目と、それに見合った絶品のサウンドを奏でる傑作マスターピースです。傑作というのは往々にして、尖った特徴があるものだと考えさせられます。
しかし、尖りすぎていないのが良い。まさに絶妙といった感じです。

難点は装着感が微妙なところ。やはり元祖モデルらしい欠点は拭いきれません。

現在の価格では「買い」の一択です。同じ価格帯でこれより無難なヘッドホンは数多くありますが、これほど輝いているヘッドホンは存在しません。ただし低音ドゥンドゥン派の人や、無難なものがひとつだけ欲しい人にはオススメしません。

本記事の内容は以上です。

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