ヘッドホン

KOSS KTXPro1のレビュー:超コスパヘッドホン。腹が立つほどに。

Koss KTXPro1のレビューです。

Kossのオンイヤー型ヘッドホン。Kossのヘッドホンは露骨な上位・下位の区別がないものが多いので、どのような位置づけのヘッドホンかはよくわかりません。

見た目と値段からは想像もつかないほどの音を出すヘッドホンです。ヘッドホンをいくつも持っている人ほど、これを最初に聴いたときの驚きが大きいでしょう。筆者はあまりの驚きの音に、本当に声を出して笑いましたからね。

※ 本記事で言及されるスペック等の情報は、特記無き場合、本国サイトの当該ページに準じています。

※ このヘッドホンはKossの日本における正規代理店のティアックが取り扱っていないモデルなので、並行輸入品を買うしかありません。某楽器安売り店が最安です。

外観・仕上げ等

外観や仕上げについてのレビューです。

全体

全体

全体。これ以上ないほどに安っぽいデザインです。妙に曲線基調なのがよくないのかもしれません。

アーム部に”titanium”などと書いてあるのが、貧相な雰囲気を助長しています。楕円のベースに白抜きで書いてあるのがいけないのかもしれません。

ヘッドバンドだけが青く、ほんのちょっとだけイカしています。このようにワンポイントで差し色を入れるのはセンスが良く見えます。まあ他の部分で台無しですがね。

ケーブルは両出しです。

仕上げ

材質はほぼ全てプラスチックです。銀色の部分は塗装してあります。

ヘッドバンドのグレー部品もプラスチックですが、やや柔らかい材質です。こちらは無塗装。

側面

側面

側面。ハウジングは丸く、まんじゅうみたいな形です。

左右の表示も楕円に白抜きで書いてあります。

開口部はパックマンみたいな形状ですが、ロゴを避けるためにそうなったのか、あるいはその形状にしたからロゴをそこに配置したのかは定かではありません。

開口部のメッシュは別部品の金属製です。このメッシュだけ黒塗装にすれば、多少は締りが出たかもしれません。

ハウジングは可動式ですが、あきらかに動く向きがおかしい気がします。この角度で可動しても、耳に沿う道理がありません。

上面

上面

上面。ヘッドバンドはシリコンゴムをばねの役割をする部品の内側に取り付けたものです。

外観 総評

非常に安っぽい外観と言わざるを得ません。曲線基調のデザインが主な原因な気がします。90年代の日本車のようなダサさがあります。

付属品など

付属品は次の2点。ただし、本体に直付けのケーブルを付属品に含めます。

  • ボリューム付きケーブル(本体に直付け)
  • ステレオミニ-標準変換プラグ
付属品

ボリューム付きケーブル

本体に直付けのボリューム付きケーブルです。

細めで頼りない感じもありますが、そのかわりに柔軟性が高く、取り回しが良い。

付属のボリュームコントローラーはギャングエラー(左右の音量差)がひどく、使い物になりません。最大音量で固定して使うことが推奨されます。改造できるなら、このボリュームを取り外すことすら考えるべきでしょう。それほどまでに使えないシロモノです。

プラグ部はコンパクトで、ポータブル使用にも不便ではありません。

ステレオミニ-標準変換プラグ

ステレオミニプラグを標準プラグに変換するアダプタです。

ヘッドホンに付属するよくあるタイプ。筆者のように多くのヘッドホンを持っている人は、これと同等のものを無数に持っていることでしょう。

音について

音についてのレビューです。

概要

音は非常にまともと言って差し支えないでしょう。弱ピラミッド系で、やや高域が弱め。外観や価格を考えれば、吹っ飛ぶほど音が良いとも思います。

次の図は、このヘッドホンの音を感覚的に表したものです。

Koss KTXPro1 音の傾向

この図の詳細はこちら。

Plastic Audio式の図の説明
本サイトにおける、スピーカーやヘッドホンの音の傾向を可視化した図の説明です。

以下は詳細です。

周波数的な特徴

低音域

低域は適切な量で、締りもあります。60Ωのインピーダンスが効いているのかもしれません。インピーダンスの高いヘッドホンは締まった音になりやすい。

外観や開放型というスペックから考えると、驚くほどまともな低音です。外観の安いヘッドホンの感じを想像していると、度肝を抜かれるはずです。

中高音域

中高域はあっさりめで、ツヤのようなものはありません。しかしそれはピークやディップがないということであり、クセのない音であるということでもあります。

バランスは概ねよいのですが、やや高域が弱く感じます。ツヤを感じにくいのはそのせいかもしれません。超高域の倍音成分はツヤ感に大きな影響を及ぼします。

音場感・定位感

音場は狭め、これは見た目通りです。

定位はごく普通です。ヘッドホンで定位が良い・悪いというのはあまり感じたことがありません。ヘッドホンはほぼ全て、1つのダイナミック型ドライバーのみで音を鳴らすので、フルレンジ1発のスピーカーのようなスパッと決まる定位感になりやすい。

音量・鳴らしやすさ

音量

音量はやや小さい。このヘッドホンは地味にインピーダンスが60Ωもあるので、その関係でしょう。ごく普通のインピーダンスが32Ω程度のヘッドホンと比べると、やや音量を上げなければいけない感じ。

鳴らしやすさ

地味に鳴らしづらい。簡易な機器では音が非常に平坦になり、音の数が多くなるとダンゴになります。しっかりしたアンプを使えば、音に彫りの深さが出て、解像感や分離感も増します。もちろん大抵のヘッドホンでそういう傾向がありますが、このヘッドホンは変化が顕著です。

ショボいヘッドホンですが、まともなアンプ等を経由する価値があります。

音について 総評

音は非常にまともです。クセがなく、リファレンスヘッドホンとしても十分に通用します。

やや高域が弱く感じるのと、少々鳴らしづらいところ以外は、あまりケチの付けようがありません。価格を考えれば、素晴らしいの一言でしょう。

この価格でまともに音について語れるヘッドホンはそうありません。このように熱く語れる(語る気にさせてくれた)時点で、相当な実力を持っている証拠です。

装着感

装着感はあまり褒められるものではありませんが、本体が非常に軽いので、ひどく悪いというほどではないと思います。

イヤーパッド

イヤーパッドは薄いスポンジです。薄いのでクッション性に乏しく、耳が痛くなりやすい。

直径は5cm程度で、耳全体はカバーできず、中央付近に乗せる感じです。

ちなみに、イヤーパッドは容易には外せません。安いヘッドホンなので、イヤーパッドが朽ちたら本体を新調しろということなのでしょうか。

ヘッドバンド

ヘッドバンドはシリコンゴム製で、柔軟なので頭頂部への負担はありません。

ただし、純粋なシリコンゴムなので通気性が悪く、ムレたりかゆくなったりしやすいという問題があります。

側圧

側圧は弱めですが、イヤーパッドがフィットしない問題があるので、強く感じてしまう場合もあります。

装着感 総評

装着感はあまり良くない。主な原因は耳にフィットしない構造です。通常はバッフル面とイヤーパッドが耳と平行になるように可動する機構が組み込まれているのですが、このヘッドホンにはそれがありません。イヤーパッドもペラペラで、外耳に余計な負担がかかります。

しかしながら、本体があまりに軽いので、結果的に著しく装着感が悪いというほどにはなっていないと思います。

携帯性

可搬性や遮音性についてのレビューです。総じて可搬性は悪くないと思いますが、開放型に違いはないので、外で使えるかは微妙です。

持ち運びしやすさ

特に折りたたみ機能などはありませんが、本体がコンパクトなので持ち運びやすくはあります。しかし、ポーチは付属しません。

外部遮音・音漏れ防止

外部の音は全く遮音できません。イヤーパッドが小さく、耳にフィットしないので、ヘッドホンを経由せずに外の音がそのまま聞こえます。ヘッドホン本体の遮音性は関係がありません。

音漏れは開放型の割には少ないようにも感じますが、バスや電車等のすぐ近くに人がいるような環境で使うのはやめたほうがよいでしょう。散歩中に使うなどであれば、問題はないと思います(このヘッドホンを着けたまま外を歩きたいとは思わないでしょうが…)。

総評

極めて安っぽい外観のわりに、あまりにクセのないまともな音を出すヘッドホンです。見た目・価格と音のギャップから、最初に音を聴いた瞬間、笑い転げることは必至です。

似たような価格帯でこれを超えるヘッドホンはまずないと断言してもよい。それどころか、1万円クラスまで敵はいないかもしれません。あまり安易にこのような表現はしたくないのですが、コストパフォーマンスは非常に良いと自信を持って言えます。
本当にコストパフォーマンスが良いヘッドホンは、実はあまり多くありません。世の中には、何でも安易にコスパがいいと吹聴する輩もいますが、このヘッドホンの音を聴いて目を覚ますべきでしょう。

しかし、安っぽい外観や微妙な装着感など、音以外の点ではあまり褒めるべきところがありません。そういう意味ではマニア向けとも言えるかもしれませんが、非常に安いので、誰にでもオススメできます。好みの音でなくとも、諦められる値段です。日本での取り扱いにやや難があるのが惜しいところ。

本記事の内容は以上です。

COMMENTS コメント