beyerdynamicの業務用ヘッドホン、DT 150のレビューです。
ベイヤーの本当に業務用を前提としていそうなヘッドホン。メインシリーズのDT 990などとは違った、地味なシリーズです。
姉妹モデル(?)のDT 100には16Ωモデルと400Ωモデルがありますが、このDT 150は250Ωのみがラインナップしています。DT 100 250Ωという名前ではないので、インピーダンス違いの同じものというわけではなさそうですが、その違いは定かではありません。
かんたんレビュー
外観・仕上げ等
外観や仕上げのついてのレビューです。
全体
全体。なんというか、無骨な外観です。
本体が非常に大きい。まずハウジングが大きく、ヘッドバンドも横に大きい。とにかくかさばるヘッドホンです。
仕上げ
仕上げはプラスチックと合皮が大半。プラスチック部分で塗装されているところはありません。傷が目立たないようにか、粗いシボのようなものが入っています。
ヘッドバンドとハウジングをつなぐ棒状の部品だけはあからさまに金属(ステンレス?)です。
側面
側面。プラスチックのチープさと金属感の対比が映えます。
それにしても、ハウジングのグレーはどういう意味なのでしょうか。白や黒では汚れや傷が目立つので、グレーにしたのでしょうか。しかしDT 100は白色なので、何を意図してこの色にしたのかイマイチ見えてきません。
金属部品とハウジングの横に一文字になっている部分によって、十字に見えます。これではドイツというよりはスウェーデンです(たぶんそういうことは考えていない)。
このヘッドホン、ケーブルは片出しですが、右からケーブルが出るという大変珍しい仕様をしています。上の写真はケーブルが付いている方を写していますが、Rと書いてあります。
なお、ケーブルのコネクタを簡単に分解できるので、はんだ付けさえできればLとRを容易に入れ替え可能です。
上面
ヘッドバンドはベイヤーお得意の着脱式。スナップボタン式で非常に簡単に着脱できます。やたら細長いのも特徴です。
材質はDT 990などと同じような感じで、安っぽい合皮です。クッション部分は薄手でやや心許ない。
バッフル面
イヤーパッドを外すとこう。和紙と不織布の中間のような、微妙な材質のものが貼ってあります。
写真を見てわかるように、これの貼り方が雑です。Made in Germanyでもこんなものです。やはり品質で日本メーカーに勝るものはなかなかありません。例えば、フォスター電機製と思われるDT 240は中国製ではありますが、はるかに品質が良い。
外観 総評
端的に言えば、黒電話の受話器に黒板消しが2個付いているような外観だと思いますが、どうでしょうか。特にハウジングに関しては、イヤーパッドがちょうどチョークの粉を吸収する部分に見えるので、黒板消しにしか見えません。
装着すると、黒電話を頭に乗せ(つまり覇気ヘア)、黒板消しを両耳に付けた奇人としか言いようのない者になります。
付属品など
付属品は次の3点。
- ケーブル
- ネジ
- 標準プラグ変換アダプタ
ケーブル
3mストレートケーブル。
ケーブル本体はビニール感の強い仕上げで、耐久性は良さそうですが上質感はかけらもありません。
コネクタはヘッドホン側が四角くゴツいもの。これは純正品が単品でも販売されています。アンプ側はネジ式の変換アダプタが使えるステレオミニ。
ヘッドホン側コネクタは6ピンです。ヘッドセットでも同じコネクタが使えるように配慮したものと思われます(DT 150にマイクを付けただけのようなヘッドセットもラインナップされています)。
ネジ
ケーブルをヘッドホン本体に固定するためのネジが同梱されます。さすがはプロ用という感じです。
小さいのでなくさないようにしましょう。
標準プラグ変換アダプタ
プロ用っぽい機器には必ずと言ってよいほど付いている変換アダプタです。ネジ式なのでストレスフリー。
音について
音についてのレビューです。
概要
全体的には、かなりフラットに感じます。機器を変えていろいろ聴いてみましたが、ピラミッド型に感じたり、低域が少なめに感じたりもしたので、アンプなどへの依存性が高く、ヘッドホン自体はフラットなのだと思います。なお、ほんの少しだけ刺さることだけはおおむね共通していました。
次の図は、このヘッドホンの音のイメージです。この画像の詳細はこちら。
周波数的な特徴
低域や高域はどんな感じなのか、ということを書きたかったのですが、アンプへの依存度が高すぎて、このヘッドホンの音がどういうものなのかを表現しにくい。
低音域
低域は多いわけではないのですが、締まりがありどっしりとしています。安定感があると言ってもよいでしょう。
中高音域
中域は良い意味で実に普通です。まったくと言っていいほど色付けを感じません。
高域は遠慮なく出るタイプです。刺さる帯域はやや刺さるので、ベイヤーらしさもかすかに残っています。
音場感・定位感
音場や定位は素晴らしい。スピーカーで聴いているかのような感じすらあります。
音場は異常なほどに広い。さすがに頭外定位というほどではないのですが、頭内定位の領域を脱出しかけている。頭外定位に片足を突っ込んでいる感じ。
定位は明確。スピーカーで聴くときのように、左右方向の位置がわかりやすい。これは音場の広さに関係しているかもしれません。
音量・鳴らしやすさ
音量
音量はかなり小さい。iPad直挿しでは最大音量付近で適切な音量となりました。爆音にはできません。
音量の面でも据え置きアンプを使うことが推奨されます。
鳴らしやすさ
かなり鳴らしづらいと思います。とにかくアンプやDACといった上流機器の音がそのまま出るので、好みの音の機器を見つけるのが重要です。それなりの音が出ていればよいというのであれば、パワーのあるアンプ(PH-A1Jなど)を使えばよいのですが、好みを追求すると泥沼にはまりそうな類です。
音について 総評
異様に音場が広く、ほんのりとベイヤー感がある音のヘッドホンです。
外観の業務用感と一致する、音まで高性能なものなのかもしれません。
装着感
装着感は良い。
イヤーパッド
イヤーパッドの表面は硬めの合皮ですが、使っているうちに馴染んできます。特に開封直後は本当にこれがイヤーパッドなのかというほどに硬い。
形状はほぼ長方形で、外側の長辺が120mmで短辺80mm、内側の長辺が90mmで短辺40mm、厚さは30mmあります。非常に大きいと言って差し支えないイヤーパッドです。耳が入らずに困るということはまずないでしょう。
ヘッドバンド
ヘッドバンドはクッションが薄めで不安もありますが、実際に装着すると、それは杞憂であることがわかります。
ヘッドバンドの形が良いのか、驚くほど頭頂部に攻撃をしかけて来ません。
DT 990 PROでもそうでしたが、ベイヤーはヘッドバンドが素晴らしい。
側圧
側圧は普通くらいか。確実なホールド感がありながら、決して強いとは感じません。しかし弱いでもなく、よほど頭を振ったりしなければずり落ちることはありません。
装着感 総評
全体的に装着感は良いと言えます。大きいイヤーパッドで耳が快適ですし、頭頂部への負担はなし、側圧も適切です。これと言って文句の出ない装着感だと思います。
ただ、イヤーパッドが他のヘッドホンよりかなり大きいので、その違いに慣れる必要はあります。
携帯性
携帯性は悪い。
持ち運びしやすさ
可搬性は低い。まず本体が大きすぎますし、ポーチ等も付属しません。ケーブルもネジで固定するので、容易に取り外せるわけではありません。
基本的には、放送局やスタジオに据え付けて使うことを想定されたヘッドホンなのでしょう。
外部遮音・音漏れ防止
外部遮音性はそれなりに高いと言えますが、驚くほど高いものではありません。騒がしい環境でも音を鳴らせば気にならなくなる程度。ヘッドホンを着けた瞬間にまったく静かになるほどではありません。
音漏れは結構あります。外で使うのはやめた方がよいでしょう(これを外で使える猛者はなかなかいないでしょうが…)。しかもシャカシャカするタイプではなく、やたらクリアに音漏れします。中高域が全部漏れている感じ。
総評
ものすごいデザインで、色付けを感じない音のヘッドホンです。わずかにベイヤー感が残っているのは嬉しいポイント。
特に音場の広さは卓越していると言ってもよい。本当にスピーカーの音をコンパクトにしたような音が聴けます。
装着感も良く、デザインを気にしなければ素晴らしいヘッドホンです。
ある意味では、これひとつ持っておけばヘッドホンで悩む必要がないタイプのものです。オススメ度はかなり高い。
本記事の内容は以上です。
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